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貧困、環境…NGOのつなぎ目に アーユス

2022年12月25日

※文化時報2022年10月14日号の掲載記事です。

 宗派を超えた僧侶らでつくるNPO法人アーユス仏教国際協力ネットワーク(松本智量理事長、東京都江東区)が、国軍による圧政の続くミャンマーへの後方支援を加速させている。役割は非政府組織(NGO)の「つなぎ目」。国際協力に携わるNGOを支え、ネットワークで結ぶことで、戦争や貧困、環境問題などに取り組んできた実績を生かしている。(山根陽一)

アーユスNGO新人賞のクラウドファンディング画面
アーユスNGO新人賞のクラウドファンディング画面

日本企業は責任ある行動を

 アーユスは、サンスクリット語で「命」の意味。その名の通り、あらゆる命に目を向け、特に困難を強いられている人々に寄り添うことを目指して、1993(平成5)年に結成された。現在は約200カ寺が参加している。

 現在、深刻なのはミャンマー。昨年2月のクーデターで国軍が実権を掌握して以来、人々の生活は困窮し、暴力も続いてきた。7月には国民民主連盟(NLD)のトップ、アウン・サン・スー・チー氏の側近や民主活動家ら4人の死刑執行が明らかになり、国内外の反発を招いている。

 アーユスは、いずれもミャンマーでの活動実績があるNGO「日本ビルマ救援センター」「インターバンド」「地雷廃絶日本キャンペーン」を通じ、タイ国境付近に逃れた避難者への人道支援に協力。さらに、国軍の資金源になっている可能性がある事業を止めるよう、NGO「メコン・ウォッチ」を通じて日本政府や日本企業に働き掛けている。

 松本理事長は「ミャンマー国内のガス田開発に関わる日本企業は、国軍に協力するような動きはせず、責任ある行動を取ってほしい」と語る。

仏教者との協働で力

 結成当初からアーユスに参画してきた松本理事長は、NGOに関わった契機を1991年の湾岸戦争だったと振り返る。差別や平和に関する市民運動に取り組む中、クウェートに侵攻したイラクと米国主導の多国籍軍の戦闘が激化したことを受け、民間機をチャーターしてクルド難民を救い出した。

 だが、現地で奮闘するNGOのスタッフらは、民間機を飛ばすより効率的な陸路での避難方法を検討していた。「厳しい環境の中、命を救うために身をささげる人々の姿に感銘を受けた。彼らを後方から支援する組織を充実させたいと思うようになった」と語る。

 それ以来、「NGOを支えるNGO」というアーユスの姿勢は変わっていない。

 最前線に立つNGOからの情報を、参加寺院を通じて社会に発信することにも力を注ぐ。「仏教者とNGOの協働は、大きな力となり、社会を良い方向に変える。アーユスはそのつなぎ目になりたい」と力を込める。

若者に活動資金を CFに挑戦

 NGOの認知度は、日本ではまだまだ低い。そこでアーユスは、取り組みを広く社会に発信しようと、今後の活躍が期待される若者を応援する「アーユスNGO新人賞」の運営に、クラウドファンディングを導入した。目標金額50万円に対し、87万円が集まった。

 クラウドファンディングを行った背景には、2019年に大口の寄付者だった初代理事長、茂田真澄師(浄土宗勝楽寺元住職)が急逝したこともある。松本理事長は2代目として遺志を継ぎ、アーユスNGO新人賞を続ける覚悟を決めている。

 松本理事長は「社会問題を解決しようとNGOに飛び込む若者は大勢いるが、待遇面に課題があり、主要な就職先にはなっていない。若い力へ活動資金を援助することが重要」と話している。

松本智量(まつもと・ちりょう)1960(昭和35)年9月、東京生まれ。龍谷大学仏教学部卒。浄土真宗本願寺派延立寺(えんりゅうじ)住職。アーユス仏教国際協力ネットワーク理事長。
松本智量(まつもと・ちりょう)1960(昭和35)年9月、東京生まれ。龍谷大学仏教学部卒。浄土真宗本願寺派延立寺(えんりゅうじ)住職。アーユス仏教国際協力ネットワーク理事長。

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