検索ページへ 検索ページへ
メニュー
メニュー
TOP > 福祉仏教ピックアップ > 『文化時報』掲載記事 > 臨床宗教師の未来語る 龍大でシンポ

つながる

福祉仏教ピックアップ

臨床宗教師の未来語る 龍大でシンポ

2023年4月23日

※文化時報2023年1月31日号の掲載記事です。

 龍谷大学世界仏教文化研究センターは18日、京都市下京区の大宮学舎で、臨床宗教師=用語解説=の未来と課題を語る新春シンポジウムを開催した。第9回「臨床宗教師・臨床傾聴士研修」養成教育プログラムを受けた研修生が成果を発表する場として開かれ、東北大学大学院文学研究科の谷山洋三教授が「臨床宗教師の現状と近未来」と題して基調講演を行った。

 谷山教授は、臨床宗教師の活動する場が障害者福祉や児童福祉の分野に拡大できる可能性を語った。街行く人々の愚痴を聞き続ける龍谷大学大学院実践真宗学研究科の「グチコレ」が話題になっていることに触れ、「こうした活動を探し、追求してほしい」と呼び掛けるとともに、活動を広げるために宗教的ケアの効果を実証する必要性を指摘した。

 臨床宗教師の心構えについても言及。「応じる相手によって態度を変えるのが人の特性。誰が相手でも、同じ対応が行えるようにすべきだ」と述べ、自分自身を見つめ直す「自己覚知」と「自己受容」が必要だと訴えた。

 養成教育プログラムを受けた4人の研修生は、東日本大震災の被災地などでの研修で最も印象に残ったことや、自分自身が進むべき方向性について語った。石川みゆきさんは、被災地で出会った人から感謝のメールが届いたエピソードを紹介。木村正幸さんは「対象者が自分の心情に向き合えるようにすることが宗教者の役割だと思った」と話した。

臨床宗教師の養成教育を受けた研修生が成果を発表した新春シンポジウム
臨床宗教師の養成教育を受けた研修生が成果を発表した新春シンポジウム

 1年間の研修を振り返った鍋島直樹教授は「東北の被災地で12年前を共有できるのか不安だった」と明かし、森田敬史教授は「研修を通して見いだした課題は、宗教者としての自分を見直した結果だ」と話した。

仏教界の活動に影響

 臨床宗教師の養成は、東日本大震災の翌年に当たる2012(平成24)年に東北大学で始まった。これまでの間、災害被災地や終末期医療の現場だけでなく、高齢者施設などで活躍する人材が出てきた。

 一方で、臨床宗教師の存在そのものが、「傾聴」や「寄り添う」といったキーワードとともに、宗派を問わず僧侶によるさまざまな社会活動に影響を与えてきた。

 浄土宗が13年から段階的に行う介護者カフェ=用語解説=や、寺院が行政と協定を結んで災害時に避難所となる取り組みなどが挙げられる。

 谷山教授は、臨床宗教師の創設に尽力した鈴木岩弓東北大学名誉教授が、一連のムーブメントを「宗教改革」と位置付けていたと伝え、「まさに現在はそのような状況にある」と指摘した。

 鍋島教授は、社会活動に取り組むようになった僧侶の意識の変化に着目。「人は、心の中の悲しみにふたをする。悲しみが光に変わるよう、僧侶には働き掛けてほしい」と話した。

【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)

 被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数は21年9月現在で214人。

【用語解説】介護者カフェ

 在宅介護の介護者(ケアラー)らが集まり、悩みや疑問を自由に語り合うことで、分かち合いや情報交換をする場。「ケアラーズカフェ」とも呼ばれる。主にNPO法人や自治体などが行っているが、浄土宗もお寺での開催に取り組んでいる。孤立を防ぐ活動として注目される。

おすすめ記事

同じカテゴリの最新記事

error: コンテンツは保護されています