2023年4月25日 | 2023年4月26日更新
※文化時報2023年2月21日号の掲載記事です。
傾聴移動喫茶カフェデモンク=用語解説=の可能性を探る「第6回カフェデモンクサミット」が12日、オンラインで行われた。西日本豪雨(2018年)と熊本地震(16年)の被災地で宗教者らが行ってきた活動に関する報告があり、116人が視聴。東日本大震災から12年となるのを前に、災害時における宗教者の役割について、改めて考える機会となった。
同サミットは昨年2月から、カフェデモンクに関わる超宗派の宗教者らが、事例の共有や臨床宗教師=用語解説=の社会への定着を目的に開催している。これまでに精神障害者らの居場所づくりに取り組む「カフェデモンクえりも」(北海道えりも町)の活動や、在宅型ホスピス「メディカルシェアハウス・アミターバ」(岐阜県大垣市)に常設されたカフェデモンクなどが取り上げられた。
西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町でカフェデモンクを開いた中国地方臨床宗教師会の桝野統胤代表は、コロナ禍で中断される20年1月までの計14回に及ぶ活動を紹介。倉敷市社会福祉協議会の生活支援コーディネーター、松岡武司氏は「皆が集まりたいと望む中で、カフェデモンクの支援は心強かった」と振り返った。
また、真備町でのカフェデモンクの特長について、松岡氏は「食べながら、飲みながらといった『ながら』の会話から、ぽろりとこぼれるSOSや前向きなメッセージが聞かれた」と指摘。「一人一人に安心を提供するだけでなく、地域が元々備えていた心配りを取り戻す活動でもあった」と語った。
熊本地震で被災した熊本県益城町でカフェデモンクの開催に従事した九州臨床宗教師会の吉尾天声氏は「東北から学んだことを、何とか熊本でも実現したかった」と回顧。
同町の広崎仮設団地で自治会長を務めていた貝崎加代子さんは「カフェデモンクに参加したお年寄りたちは、大きな笑い声を響かせ、見たこともない笑顔になった。月1回の開催をとても楽しみにしていた」とのビデオメッセージを寄せた。
【用語解説】カフェデモンク(宗教全般)
2011(平成23)年の東日本大震災を機に始まった超宗派の宗教者による傾聴移動喫茶。コーヒーやスイーツを振る舞い、人々の心の声に耳を傾ける。曹洞宗通大寺(宮城県栗原市)の金田諦應住職が考案し、僧侶や修道士を意味する英語のモンク(monk)と文句、悶苦の語呂合わせで命名した。全国の災害被災地や緩和ケア病棟など14カ所に広がっている。
【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)
被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数は21年9月現在で214人。