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超高齢社会 寺院・僧侶の強み生かせる

2023年5月31日

※文化時報2023年3月31日号の掲載記事です。

 大正大学(髙橋秀裕学長、東京都豊島区)の地域構想研究所BSR推進センターは3日、シンポジウム「超高齢社会における寺院・僧侶の可能性」をオンライン併用で開いた。伝統的な月参りや新たな取り組みとしての介護者カフェ=用語解説=について、4人の識者が講演し、討議した。

大正大学で行われたシンポジウム
大正大学で行われたシンポジウム

 浄土宗総合研究所の東海林良昌研究員は、「介護者カフェの広がり」をテーマに講演。老老介護やヤングケアラー=用語解説=など、厳しい環境に置かれた在宅介護者の悩みを聞き、分かち合う意義などについて解説した。宗祖法然上人は分け隔てなく人々に接していたことにも言及した。

 BSR推進センターの小川有閑主幹研究員は「月参りの実態とその可能性」と題して話した。浄土宗願生寺(大阪府住吉区)、臨済宗妙心寺派昌東院(秋田市)、浄土真宗本願寺派覚円寺(福岡県上毛町)の月参りの様子を動画で紹介。「月参りは供養だけでなく、高齢者の心身の不調や悩み事を聞くいい機会だ」と語り、地域包括ケアシステム=用語解説=と連携できる可能性を示した。

 東京都健康長寿医療センター研究所の精神科医、岡村毅研究副部長は、超高齢社会では「医療が進化しても、認知機能が低下した人は増え続ける」と指摘。宗教者が認知症患者の支援を行っていることを高く評価し、「海外ではこうした例は少ない。傾聴力に優れ、死後のケアを提供できる寺院や僧侶の強みを生かすべきだ」と主張した。

 同医療センターの宇良千秋研究員は、日本では在宅より介護施設で死亡するケースが多く、施設で看取りのニーズが高まっているとの現状を伝えた。その上で、「看取り介護に関わる職員は、精神的な負担が大きい」と問題提起。「介護職員の死生観教育や、看取りの中で生じる悩みに、宗教者が関われる可能性は大きい」と述べた。

【用語解説】介護者カフェ

 在宅介護の介護者(ケアラー)らが集まり、悩みや疑問を自由に語り合うことで、分かち合いや情報交換をする場。「ケアラーズカフェ」とも呼ばれる。主にNPO法人や自治体などが行っているが、浄土宗もお寺での開催に取り組んでいる。孤立を防ぐ活動として注目される。

【用語解説】ヤングケアラー

 障害や病気のある家族や高齢の祖父母を介護したり、家事を行ったりする18歳未満の子ども。厚生労働省と文部科学省が2021年4月に公表した全国調査では、中学2年生の5・7%(約17人に1人)、全日制高校2年生の4・1%(約24人に1人)が該当した。埼玉県は20年3月、全国初の「ケアラー支援条例」を制定し、県の責務による支援を明示した。

【用語解説】地域包括ケアシステム

 誰もが住み慣れた地域で自分らしく最期まで暮らせる社会を目指し、厚生労働省が提唱している仕組み。医療機関と介護施設、自治会などが連携し、予防や生活支援を含めて一体的に高齢者を支える。団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに実現を図っている。

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