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親子で入れる合同墓 育成会、札幌市に建立

2023年10月24日

※文化時報2023年9月8日号の掲載記事です。

 知的障害のある子らの面倒を見られなくなる「親なきあと」の不安を解消しようと、保護者らでつくる「札幌市手をつなぐ育成会」(長江睦子会長)は、親子で入れる合同墓を同市内の霊園に建立した。子どもの納骨が心配という会員の声に応え、8年がかりで実現にこぎつけた。全国手をつなぐ育成会連合会(東京)によると、希望する会員と家族らが入れる合同墓の建立は「全国の育成会でも例がない」という。(奥山正弘)

 合同墓は札幌市南区の真駒内滝野霊園の一角に建立され、7月23日にお披露目と最初の納骨を行った。公益社団法人ふる里公苑が運営する公園霊園で、宗教・宗派・国籍を問わず誰でも利用でき、周囲には高齢者福祉施設の合同墓などが立ち並ぶ。

 御影石製の墓石は幅3.5メートル、奥行き4.6メートル、高さ2.3メートルで、「共に」の文字が刻まれた。健常者と障害者が「ともに生きる」社会の実現を目指す育成会の活動理念を象徴した。

(画像①アイキャッチ兼用:建立された合同墓。「共に」の文字が目を引く(札幌市手をつなぐ育成会提供))
建立された合同墓。「共に」の文字が目を引く(札幌市手をつなぐ育成会提供)

 合同墓建立の検討が始まったのは2015(平成27)年秋。「知的障害のある子どもは、亡くなった親の納骨ができない。自分の死後の準備をすることも困難」。親なきあとをテーマにしたセミナーで、会員からこんな声が多く寄せられたのがきっかけとなった。

 会員たちは札幌市内にある官民の墓地を精力的に訪ね、情報収集に奔走。18年、合同墓を真駒内滝野霊園に設置すると決めた。

 札幌市手をつなぐ育成会の深宮しのぶ事務局長によると、管理料を毎年支払う墓地の場合、親なきあとに障害のある子どもが払っていくことは難しく、「親が先に永代管理料を一括払いできることが決定の決め手になった」と説明する。

 合同墓の建立費は1400万円。当初は育成会の基金を一部に充てることも検討された。一方、会員を対象にしたアンケートで、合同墓の利用希望が「ある」と答えたのは、回答者(429人)の約2割(91人)にとどまったことから、最終的に建立費は墓を利用する会員が負担することになった。

 利用料は今後50年間の維持管理業務費などを考慮して、1柱につき11万円と決めた。希望すれば別料金で、墓誌に名前を刻むこともできる。

 アンケートでは、利用希望者が家族を含めて200人超となることも分かり、納められる遺骨は200柱とした。利用できるのは原則、正会員と配偶者、その子どもや父母、義父母など1親等以内の血族・姻族。昨年10月から募集を始め、これまでに63家族193人(8月24日現在)が申し込んだという。深宮事務局長は「資金や管理料を巡ってさまざまな意見があり、建立までに時間がかかったが、ようやく会員の希望を実現できた。会としての役割を果たせてうれしい」と話した。

 合同墓の問い合わせは札幌市手をつなぐ育成会(011―738―2221)。

お披露目、無宗教で

 合同墓のお披露目は7月23日に無宗教で行われ、墓に入ることを希望している保護者や家族、札幌市の福祉関係者ら約50人が参加。あいさつに立った札幌市手をつなぐ育成会の長江睦子会長は実現までの経緯を振り返り、「8年という長い月日がかかり、希望した人をお待たせしたが、この日を迎えられたことは皆さまのご理解、ご協力のおかげ」と感謝の言葉を述べた。

(画像②:保護者らが参加して行われた合同墓のお披露目(札幌市手をつなぐ育成会提供)
保護者らが参加して行われた合同墓のお披露目(札幌市手をつなぐ育成会提供)

 また、「皆さまの思いの詰まった合同墓を安定して運営していくため、今後も育成会活動により一層邁進(まいしん)していく」と決意を表明した。

 引き続き、合同墓の発案者で、障害のある次男と共に入れる合同墓の建立を切望し、2017(平成29)年に亡くなった育成会の先々代会長、奈須野益(ゆたか)さん(享年69)の納骨を行い、参列者が黙禱(もくとう)をささげた。

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