2024年2月6日 | 2024年7月8日更新
※文化時報2024年1月12日号の掲載記事です。
障害のある人が日常生活を送る上で支障をきたす「社会的障壁」を大学内からなくそうと、龍谷大学は昨年12月20日、深草学舎成就館(京都市伏見区)で第6回「共生のキャンパスづくりシンポジウム」を開催した。学生らでつくる実行委員会の6人が活動報告と提言を行い、脊髄性筋萎縮症=用語解説=の卒業生、増田優花さんも、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を遠隔操作して登壇した。
OriHimeは、障害や難病などで外出が困難な人が、自宅から遠隔操作して動かすロボットで、オリィ研究所(東京都中央区)が開発した。社会参画を可能にするツールとして周知しようと、2021年4月から東京都中央区で「分身ロボットカフェDAWN(ドーン)」を開いている。
増田さんは、OriHimeを駆使しながら、カフェでの受け付けや配膳、接客などを行っていると伝えた上で、「普段の生活では支援される立場だが、分身ロボットを使えばハードルを感じることなく、対等でいられることがうれしい」と話した。
国際学部3年の池田凜さんは、自身が注意欠陥・多動症(ADHD)=用語解説=であることを明かし、「大学はいい意味で放任主義。ただ、自分で解決することが苦手な人たちは取りこぼされる」と問題提起した。
経済学部4年の神原雄大さんは、ムスリムの留学生が教えにより禁止される食べ物があるため、学内で食事を取りづらい実態があるとの調査結果を発表。「大学には、不自由さを訴える声をくみ取る仕組みが必要」と訴えた。
実行委員会代表で経営学部3年の渡邉仁さんは、活動を振り返った上で「自分が楽しいと思えることは、社会のためになることだった」と話した。
入澤崇学長は、誰もが悩みや苦しみを伝えられる大学にしていくと強調。社会課題を解決する事業を創造する拠点「共創HUB(ハブ)京都」を、京都信用金庫と大阪ガス都市開発との共同体で2027年に開設することに言及し、「君たちのような高い志を持つ学生向けのマンションを設ける。住まいと学びが一体化する施設にしていく」と説明した。
【用語解説】脊髄性筋萎縮症
脊髄の前角細胞の病変によって起こる神経原性の筋萎縮症。体幹や四肢の筋力低下、筋萎縮が進む。小児期に発症するⅠ型、中間型のⅡ型、軽症のⅢ型、成人期に発症するⅣ型の4種があり、発生率は2万人に1人程度とされる。
【用語解説】注意欠陥・多動症(ADHD)
不注意や多動性、衝動性を主な特徴とする発達障害。学齢期の小児の3~7%いるとされる。「短く、はっきり」とした伝え方や、分かりやすいルールの提示などの配慮を必要とする。傷ついた体験に寄り添うなどのケアも求められる。