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「みんなが集う」淨願寺 和魂洋才の刀禰住職

2024年3月31日

※文化時報2024年2月2日の掲載記事です。

 浄土真宗本願寺派淨願寺(和歌山県紀の川市)の刀禰法城住職(54)は、約17年に及んだ米国在住の経験と臨床宗教師=用語解説=としての学びを元に、あらゆる人が集えるコミュニティーとしてのお寺づくりに力を注いでいる。崩壊しつつある檀家制度に代わり、門信徒獲得のための新たなアイデアはあるのだろうか。寺院運営のヒントを尋ねた。(佐々木雄嵩)

 子育て世代対象の「ベビー&キッズマッサージ教室」、園児・児童の情操教育を行う寺子屋、中高生向けのディスカッションクラス、寺子屋食堂、終活ワークショップ「お坊さんのゆる~い話」―。淨願寺の行事は多岐にわたる。しかも、全て参加無料。賛同者からのお布施・浄財が運営資金となっているという。

 2022年10月には、門徒からの相談をきっかけに結婚相談所を開設した。ベトナムやフィリピンの女性と門徒の男性の仲を取り持つ機会が多いが、彼女たちには家族を大切にする文化があるという。古き良き日本人の姿と重なるため、地域から受け入れられているようだ。

(画像①:親子が集うベビー&キッズマッサージ教室)
親子が集うベビー&キッズマッサージ教室

 「お寺は本来、赤ちゃんからお年寄りまで、世代を超えて集い、悩みや喜びを共有できる場所」と語る刀禰住職。背景に色濃くあるのが、米国での経験だ。

米国で生死問う

 高校3年生のときに米国に留学。その間、父の諦了(たいりょう)住職(当時)が心筋梗塞で亡くなった。危篤に際しては「法城の将来の邪魔をしてはいけない」と遺言し、一切知らされなかった。

 帰国後に見た遺言状の最後には、震える筆跡で「南無阿弥陀仏」とあった。死とは何か。生きるとは何か。人生で初めて味わう悩みであり、苦しみだった。

 人の生死(しょうじ)の問題の解決を求め、龍谷大学大学院仏教学科で修士課程を修了したが、納得のいく結論は得られなかった。留学で縁を感じた米国へ再び渡り、ハワイ開教使を3年務めた。「もっと広い場所で答えを見つけたい」と、ボストン大学で神学を学びながらチャプレン=用語解説=としてのトレーニングを受けた。

 米国には、宗教が日常にあった。宗教に支えられ、自分の道を歩むことが尊重されていた。他宗教にも寛容で、死にゆく患者から「仏教の話を聞かせてほしい」と頼まれることも多かった。

 他方、日本では心の内を表に出せない人が多いという。「お医者さんや看護師さん、家族任せで自分の意志が感じられない。自分だけでなく、残される子や孫が困らないようにしないと」と指摘し、「日本の宗教者には、心の声や命の声を聴くことが足りていないのではないか」と話した。

檀家制度に代わり

 国境だけでなく、ときには宗派も超え、生死を問い続ける。禅寺で修行させてもらった時には、坐禅をする中で、息一つに大いなる命の中で生かされていることに気付かされたという。

(画像②:体と呼吸を整えて始まる終活セミナー)
体と呼吸を整えて始まる終活セミナー

 住職継承のため帰国後は、門徒の減少に危機感を覚える日々だった。

 「いわゆる大手の修行寺や観光寺院は今後も残るが、檀家制度にあぐらをかく寺院は自然消滅していく。昔ながらの門徒だけでなく、新たな信徒を引き込まなければならない」

 対策の一つとして検討しているのが、檀家制度からメンバーシップ制度への変革。米国のドネーション(寄付)文化をイメージし、寄付をした会員が特典を受けられるような新たな組織を作りたいと考えている。

 当面の目標は「終活支援センター」の開設。庫裏を改装して、看取(みと)りのできる場にしたいという。「お寺があるから一人でも大丈夫、というメッセージを感じてほしい。そして昔のように、お年寄りが命を閉じていく場面を、子どもたちや赤ちゃんにも見てほしい」

 どんな人でも集えて、生から死まで関われるお寺をつくりたい、という思いは強くなるばかりだ。

(画像③アイキャッチ兼用:『看取りの場』に改修予定の庫裏について語った)
『看取りの場』に改修予定の庫裏について語った

【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)

被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数は23年5月現在で212人。

【用語解説】チャプレン(宗教全般)

主にキリスト教で、教会以外の施設・団体で心のケアに当たる聖職者。仏教僧侶などほかの宗教者にも使われる。日本では主に病院で活動しており、海外には学校や軍隊などで働く聖職者もいる。

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