2024年4月14日
※文化時報2024年2月27日号の掲載記事です。
浄土真宗本願寺派が母体となって設立した「お坊さんのいる病院」として知られる独立型緩和ケア病棟「あそかビハーラ病院」(京都府城陽市)が、新たに学術団体「あそかビハーラ医学会」を立ち上げ、17日に本願寺派伝道本部で設立記念大会を開いた。約40人が参加し、病院の在り方やビハーラ活動=用語解説、医療と宗教の協働などについて学びを深めた。今後は学術大会を年1回開き、活動への機運を高める。(松井里歩)
あそかビハーラ医学会は、各地の医療・福祉現場で取り組まれているビハーラ活動の実践を基に、人材育成や待遇改善などを図りつつ、理想のビハーラ活動の在り方を追求しようと設立された。医師部会、看護部会、栄養部会、僧侶部会の4部会を設置。学術的な背景に基づき、医療、福祉、宗教などの多職種で議論を重ねる。
あそかビハーラ病院を運営する一般財団法人日伸会ビハーラ医療福祉機構の後藤彰大理事長は、あいさつで「僧侶は医療制度の中ではまだ評価されておらず、みんなで意識を変えていく必要がある。この会が、患者、家族、医療従事者のためになる組織であってほしい」と述べた。
同病院のビハーラ僧で僧侶部会の副部会長を務める花岡尚樹氏は「宗教者にとっては病棟で活動する仲間が少ないため、一人で抱えてしまう。部会では情報交換や現場での思いを共有していきたい」と話した。
17日の大会には、上智大学グリーフケア研究所名誉所長の髙木慶子氏と相愛大学学長の釈徹宗氏がそれぞれ基調講演を行った。
髙木氏は、ホスピスで出会った「死んだら無になってしまう」という恐怖を抱える男性とのエピソードを紹介。「亡くなっていく絶望の中にいる方に、希望を探し、与えるのがわれわれの役割」と強調した。「元気に生きていても、希死念慮の強い人へのケアは、ターミナルケア(終末期ケア)と同じだ」と指摘。宗教者に対し「次に行く世界がどれほど素晴らしい場所なのかを考えない限り、ターミナルケアはできない」と話した。
一方、釈氏は、自坊の如来寺(大阪府池田市)の裏にある民家を利用して運営する認知症高齢者のグループホーム「むつみ庵」について説明し、現場での実践や認知症高齢者が受けるケアについて体験できるワークショップから学んだことなどを話した。
【用語解説】ビハーラ活動(浄土真宗本願寺派など)
医療・福祉と協働し、人々の苦悩を和らげる仏教徒の活動。生老病死の苦しみや悲しみに寄り添い、全人的なケアを目指す。仏教ホスピスに代わる用語として提唱されたビハーラを基に、1987(昭和62)年に始まった。ビハーラはサンスクリット語で「僧院」「身心の安らぎ」「休息の場所」などの意味。