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医学・社会学・宗教哲学は、自殺をどう捉えるのか

2024年5月3日

※文化時報2024年3月15日号の掲載記事です。

 自殺対策強化月間(3月)を前に、筑波大学人文社会系社会連携推進室は2月29日、公開シンポジウム「自殺を考える。」をオンラインで開催した。筑波大学に在籍する研究者らが医学や社会学、宗教哲学などそれぞれの分野での自殺の捉え方を紹介し、現代社会でどう向き合うかを話し合った。(松井里歩)

 保呂篤彦教授(宗教哲学)はキリスト教の聖書や教会において自殺がどのように捉えられてきたかを紹介。自殺は聖書では禁じられていないものの、教会では3~4世紀以来「犯罪」として非難されてきた歴史をひもといた。

 自殺の禁止と非難を方向づけた人物にアウグスティヌス(354~430)とトマス・アクィナス(1225ごろ~74)を挙げ、自分を殺人したことと同義であることや、共同体の一員として害悪をなすと著書に記していることを述べた。

 現代のカトリック教会では一定の条件下にある自殺を犯罪とみなすものの、神による救いの可能性を排除せずそれを祈るという教理になっているという。

(写真・アイキャッチ兼用:発表者らで行われたダイアローグ)
発表者らで行われたダイアローグ

 発表後は、発表者らによるダイアローグ(対話)が行われた。医学の分野から登壇した太刀川弘和教授は「自殺予防の考え方はキリスト教的で、活動をする人にもクリスチャンが多い」と話し、医学が安楽死や自殺予防の役に立てない場合のために臨床宗教師=用語解説=らが活動していると紹介した。

 五十嵐沙千子准教授(現代思想)は、飛び降りたり首をつったりする行為はできても、「自殺する」ことはできないのではないかと提起。「生きるためには、特定のものではない別の選択肢があることを忘れないようにしたい」と締めくくった。

【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)

被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数は23年5月現在で212人。

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