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〈文化時報社説〉意思決定支援に関心を

2024年6月18日

※文化時報2024年3月15日号の掲載記事です。

 「認知症と診断された後は、本人や家族の話に共感し、傾聴する姿勢が必要不可欠。これは今、医師が国から勉強するようにと言われていることです」

社説・意思決定支援

 京都府医師会の認知症対策担当理事、西村幸秀さんがそう語ると、参加者らは感心したような表情を見せた。堺市の看護師、佐藤正一さんが塾長を務める「男塾」の勉強会でのことだ。

 精神科専門医でもある西村さんは、傾聴が必要とされる背景として、認知症と診断された本人や家族の「不安」を挙げた。「診断名を告げられ、薬を処方されるだけだった」「これからの変化や症状についての説明がなかった」。そう感じる人が多いのだという。

 勉強会では、さらに「意思決定支援」へと話が及んだ。認知症のある人や知的障害のある人を支える福祉の現場で最近、よく話題になる支援の在り方である。

 意思決定支援とは、端的に言えば、本人が何かを決める際にサポートすることを指す。支援者ではなく、本人の視点に立つことが求められるほか、誰もが意思や決める力を持っているという前提で、その意思を尊重し支えていくことが重視される。

 厚生労働省は意思決定支援の基本的な考え方を「だれもが『私の人生の主人公は、私』」というフレーズで説明している。障害者権利条約の原点となったスローガン「Nothing About Us Without Us」(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)に通じる言葉だ。

 西村さんは「意思決定の共有」(SDM=Shared Decision Making)という概念も紹介した。患者と医師の両方が情報を共有し、適切な治療方法を決めることをいう。医師は選択肢を示し、患者は好みや信念に合わせて選び取る。

 医師にとっては、権威をかさに着て治療方法を決めるのではないことはもちろん、十分に説明して患者の同意を得る「インフォームド・コンセント」からもさらに進んで、患者が主体性を持って決めることを支える―という役回りになる。医師による意思決定支援と位置付けられるだろう。

 もちろん、患者が自らの病気について医師と同等の知識を持っているという状況は考えにくい。また、たとえ医師に傾聴してもらっても、病院の外に出れば再び不安が頭をもたげるかもしれない。診察に同席して支えてくれたり、代わりに聞きにくいことを質問してくれたりといった寄り添う存在も必要だ。

 意思決定支援は、チームで行うのが基本である。医療・福祉関係者や家族、場合によっては成年後見人も加わる。そこに、本人のことをよく知る僧侶が入るのは、自然だろう。日頃から檀家・門徒との関係を密にする努力が欠かせない。

 傾聴を学ぶ医師など昔なら想像もつかなかったが、新しい知見を吸収し、変化を続けようとする姿勢を、僧侶も見習うべきではないだろうか。大切な人を失ったグリーフ(悲嘆)を抱える檀家・門徒の話を、傾聴できているか。弔いの際に故人や遺族の意思を尊重し、不安にさせないよう説明を尽くしているだろうか。まずは足元の法務から見直してほしい。(主筆 小野木康雄)

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