2024年6月22日
※文化時報2024年4月30日号の掲載記事です。
浄土宗大本山清浄華院(京都市上京区)は20~23日、開宗850年を祝う法要と法然上人の忌日法要の御忌大会(ぎょきだいえ)=用語解説=を兼ねた浄土宗開宗850年慶讃(けいさん)御忌法要を開筵(かいえん)した。障害の有無に関わらず誰もが味わえるよう、伝統的な儀礼に工夫を重ねた法要とした。また法然上人の半生を描いたオペラの上演など、多彩な催しを連日行った。(大橋学修)
開白に当たる20日の開宗850年御祥当慶讃法要は、清浄華院に伝わる伝統的な御忌大会の儀礼に、開宗850年を祝う儀式を組み込んだ。導師を務めた飯田実雄法主が開宗の御文=用語解説=を拝読し、左右の導師の山下法彦・樹敬寺(三重県松阪市)住職と松岡克也・安國寺(群馬県高崎市)住職が、法要の趣旨や意義を仏祖に伝える宣疏(せんしょ)と表白を行った。
21日は「ともいきの日」と題して、障害のある人もない人も共に参拝できる内容とし、福祉施設の利用者らを招待した。法然上人の生涯を解説しながら、遺徳をたたえる諷誦文(ふじゅもん)を現代語に翻訳。ウクレレの生演奏をバックに、中導師を務める野田博之法泉寺(京都市西京区)住職が拝読し、法然上人の一代記を描いたイラストをプロジェクターで投影した。
法要前には性的少数者=用語解説=でメイクアップアーティストとして活動する浄土宗僧侶の西村宏堂氏が講演。生物的な性と自身の性自認が異なったことで差別されたことや、米国留学の経験を経て仏教が世界中の人の希望になり得ると感じたことを伝えた。
各日程の法要前には、法要のテーマに沿った催しを行い、多様性を誇る清浄華院の特色を打ち出した。開白の20日は、0~12歳まで尼寺に預けられた経験を持つオペラ歌手の澤武紀行さんが、今回のために制作したオペラ『二祖対面』を初上演。法然上人が専修念仏に目覚め、夢の中で善導大師と出会ったとされる奇瑞(きずい)を表現した。澤武さんは「私たちと同じ凡夫である『人間・法然』が求道する姿を描いた」と話した。
上演後には、飯田法主が書道パフォーマンスを披露。全長約12メートルの紙に「南無阿彌陀佛」と大書し、書き上げた後参拝者と共に10回の念仏を唱えた。翌日には、境内に立地する介護老人福祉施設つきかげ苑に掲げた。
22日は「ふるさとの日」と題し、境内に特設ステージを設け、清浄華院に縁が深い島根県西部地域で親しまれる石見神楽の奉納を行った。満座となる23日の慶讃御忌結願法要は「平和の日」と銘打ち、シンガー・ソングライターの加藤登紀子さんが「平和な未来のために」と題してトークライブを行った。
【用語解説】御忌大会(ぎょきだいえ=浄土宗など)
浄土宗の宗祖法然上人の仏徳をしのんで営む忌日法要。後柏原天皇の勅命で旧暦1月に営まれるようになり、多くの参拝を得るため、1877(明治10)年からは新暦4月に勤めるようになった。
【用語解説】開宗の御文(かいしゅうのごもん=浄土宗など)
善導大師がまとめた『観経疏』の一節「一心に専(もっぱ)ら弥陀の名号を念じて行住坐臥(ぎょうじゅうざが)に、時節の久近を問わず。念念に捨てざる者、これを正定(しょうじょう)の業と名づく。かの仏の願に順ずるが故に」。法然上人が専修念仏に目覚め、開宗する契機となった。
【用語解説】性的少数者
性的指向や性自認のありようが、多数派とは異なる人々。このうちレズビアン(女性の同性愛者)、ゲイ(男性の同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(身体の性に違和感を持つ人)の英語の頭文字を取ったのがLGBTで、クエスチョニング(探している人)を加えてLGBTQと呼ばれることがある。