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教育現場で伴走型支援 チャプレンのケア提唱

2024年9月5日

※文化時報2024年6月11日号の掲載記事です。

 キリスト教精神に基づいた教育について考える日本キリスト教教育学会(会長・伊藤悟青山学院大学教授)は5月31日と6月1日、同志社大学今出川キャンパス(京都市上京区)で第36回学会大会を開催した。統一テーマは「キリスト教教育の伝統と革新」。多様な悩みを抱える青少年にチャプレン=用語解説=が寄り添い、医療や教育の専門機関につなげる伴走型支援の可能性などについて話し合った。(大橋学修)

 5月31日には「キリスト教教育とカウンセリング」と題するフォーラムを行った。神戸海星女子学院大学の渡邊恵梨佳専任講師は、ストレスを緩和する力や回復力を幼児期から養うことで、自己肯定感が育まれると説明。「自己肯定感を高めることが、カウンセリングの機能を代替する可能性がある」と指摘した。

 西南学院大学神学部の才藤千津子学部長は、学生によって多様な悩みがあるため、悩みに応じた支援機関につなげる必要があると訴え、「日頃から信頼関係をつくり、いつでも『助けて』と言える環境をつくることで、神に愛された存在であると自覚させることが重要」と強調した。

 日本基督教団正教師で関西学院千里国際キャンパスのチャプレンも担う土井直彦氏は、多様な医療関係者が連携するチーム医療の中に、スピリチュアルケア=用語解説=を担うチャプレンが組み込まれていることを紹介し、教育現場にも同様の枠組みを設けるよう提言した。

キリスト主義による教育機関のカウンセリングについて語り合う渡邊氏、才藤氏、土井氏(左から)
キリスト主義による教育機関のカウンセリングについて語り合う渡邊氏、才藤氏、土井氏(左から)

 その上で、チャプレンの役割を宗教担当の教員が担うという方向性を示し、「キリスト教教育の担い手の養成課程にスピリチュアルケアの要素を組み込むことや、学校心理士などを養成する際に宗教的援助を学ばせる必要がある」と呼び掛けた。 

デジタル空間の身体性

 6月1日には「デジタル時代のキリスト教教育」をテーマにシンポジウムを開いた。キリスト教教育で重視される身体性がデジタル空間においてどのような意味を持つかを話し合った。

 同志社大学神学部の関谷直人学部長は「印刷物や動画配信は、身体性を拡張したもの」と定義。「イエスの話は、口伝や書写で伝えられたため揺らぎがあったが、活版印刷で均質な聖書が発刊されたことで厳格化された。器によって、中身は変質する」と述べた。

 頌栄(しょうえい)幼稚園の阿部扶早元園長は、自然と触れ合うことで子どもたちが自ら学ぶことができるとして、アナログによる教育の重要性を伝えた。

 日本基督教団高槻日吉台教会牧師の吉岡恵生氏は「イエスと隣人との新たな出会いを求めて、オンラインツールを使うべきだ」と主張。布教されていない地に渡った宣教師が、かつて「そこに神はすでにおられた」と語ったことを引き合いに、「デジタル空間にも神はおられる」との見方を示した。

【用語解説】チャプレン(宗教全般)
 主にキリスト教で、教会以外の施設・団体で心のケアに当たる聖職者。仏教僧侶などほかの宗教者もいる。日本では主に病院で活動しており、海外には学校や軍隊などで働く聖職者もいる。

【用語解説】スピリチュアルケア
 人生の不条理や死への恐怖など、命にまつわる根源的な苦痛(スピリチュアルペイン)を和らげるケア。傾聴を基本に行う。緩和ケアなどで重視されている。

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