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やさしい医療実現を 障害者家族「めざす会」設立

2024年8月10日

※文化時報2024年7月30日号の掲載記事です。

 障害のある子を持つ母親らが「スペシャルニーズのある人のやさしい医療をめざす会」(FMCA)を設立し、活動を始めた。子どもの通院で困ったことや大変だったこと、成人してからの病院選びなど、さまざまな課題に着目。障害者だけでなく、高齢者や外国人など「誰にとってもやさしい医療」を実現するため、医療・福祉職との連携を進めていく方針だ。(松井里歩)

小児科からの卒業

 年齢を重ねていくにつれ、知的・発達障害のある子どもたちがどのように医療を受ければいいのかという問題は、これまで見過ごされてきた。その一つが、小児科からの〝卒業〟。18歳を迎えると、主治医から促されることが多いという。

 しかし、幼い頃から特性を分かってくれて、どんな診療科も横断して診てもらえる小児科にかかり続けた場合、地域の病院を受診する経験はほとんどない。このため、障害に理解のある通いやすい病院を、それぞれの科で探し回ることになる。

 こうした課題を解決しようと、自閉症のある成人の子どもを持つ中井美恵さんと吉田琴美さんが共同代表となり、今年4月に会を立ち上げた。それぞれの知り合いに声をかけ、理念に賛同する母親たちが集まったという。

キックオフイベントとして配信する動画の収録に臨んだFMCAのメンバーと専門家たち

 FMCAは「誰にとってもやさしい医療」の英語(Friendly Medical Care for All)の頭文字。会の名称にもあるスペシャルニーズは、障害のある人や医療的ケアが必要な人、高齢者や子ども、妊婦、外国人など、特別な配慮が必要な人を指す。そうした人々が、安心して地域で医療を受けられる社会にすることが目標だ。

語り合いでキックオフ

 7日には大阪市内でキックオフイベントとなる配信動画の収録が行われ、医療や福祉の専門家とFMCAのメンバーらが、やさしい医療を巡る課題を語り合った。

 登壇した専門家は、大阪大学歯学部付属病院障害者歯科治療部の歯科医師、村上旬平氏▽自閉症eサービス全国ネット代表、中山清司氏▽生活介護事業所「bonワークス枚方」管理者の真船亮氏。

 村上氏は、専門である障害者歯科の分野が、障害者医療の中でも世間への浸透が比較的早かったと説明。「病院は継続して通う所なので、いきなり歯を削ったり親に叱られたりせず、喜んで来てもらえるような環境を整えることが必要」と話した。

 それに対し吉田さんは、子どもが暴れたため、診察を断られ悲しい思いをしたという経験を明かした。しかし「別の所では『とりあえず来て!』というスタンスで、ほめてくれることも多かった。少しのことで安心できるようになると実感した」と振り返った。

 別のFMCA役員は、車で1時間かけてわが子をクリニックに連れて行く親や、電車で遠くまで通院する高齢の親子の話を聞いたことがあると指摘。障害のある人に対応する医療機関が、地域に十分にないと訴えた。

行政にもつなげる

 FMCA役員の一人で看護師の河本鈴代さんは、子どもに伝えることの重要性を話題にした。採血時には、手順や抜かれる血の分量などを、自作の人形を用いて分かりやすく説明することで、恐怖心を低減できたり痛みから気をそらせたりできていると語った。

自作の人形で子どもへの説明の大切さを語る河本さん

 その上で「親の方にいい医療体験がなく、親も医療者も緊張していたら、子どもがどうしていいか分からなくなる。医療・福祉・地域が親子を周りから支えていけたら」と伝えた。

 吉田さんは、保護者の声を集めるとともに、医療・福祉側のニーズも拾い上げることで、行政につなげることが重要だと強調。「『やさしい医療があったらいいな』で終わらせないことが必要だ」と力を込めた。

 キックオフイベントの動画はイベントページ(https://fmcakickoff.peatix.com/)から8月20日まで視聴できる。今後はスペシャルニーズのある当事者らへのアンケートを行い、学習会や交流会を開催。次回は10月18日、障害のある子の面倒を親が見られなくなる「親なきあと」に関する学習会を予定している。

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