2024年11月16日
※文化時報2024年9月13日号の掲載記事です。
宗教学や社会学、心理学などの研究者らでつくる「宗教と社会貢献」研究会は8月29日、2024年度の第1回研究会を開催した。上智大学大学院教授で同大学グリーフケア研究所所員の葛西賢太氏と、北海道大学大学院博士課程の高天霖(こうてんりん)氏が研究報告を行った。
チャプレン=用語解説=の研究と養成を専門にする葛西氏は「米国チャプレンの養成と就業」と題して発表。宗教的ニーズが表に出やすい米国では、病院や刑務所など、日本よりも多様な活躍の場があると紹介した。一方で修士号取得に伴う借金を抱えた人が多いにもかかわらず、給与が不十分で兼業しているチャプレンが目立つとの実情を明らかにした。
葛西氏によると、米国でのチャプレンの雇用は退役軍人や医療、消防など部門が分かれており、求められる経験や要件が異なる。そうした中でも強く推奨されるのが「臨床牧会教育」の受講。グループワークを介して、傾聴・ケアを行う者としての自分を徹底的に省察する。並行して実践も行い、さまざまな施設での救急対応や他宗教の人からの傾聴など、現場で必要とされるスキルを身に付けるという。
その上で、日本でも現在進んでいない関係機関同士の連携や、諸宗教を理解し仲介する力を持てる比較宗教学の必要性を説いた。
一方、高氏は中国広東省深圳市の寺院ボランティアに関する調査を報告した。活動者に信仰を持たない若者の移住者が多いことから、僧侶が聖を維持する一方でボランティアが俗の部分を担っていると指摘。寺院での活動は、宗教的な体験感覚を求める若者のニーズを満たすとの考えを示した。
【用語解説】チャプレン(宗教全般)
主にキリスト教で、教会以外の施設・団体で心のケアに当たる聖職者。仏教僧侶などほかの宗教者もいる。日本では主に病院で活動しており、海外には学校や軍隊などで働く聖職者もいる。