2025年4月16日
人間の最大不幸は、其(そ)の成功を意識した瞬間から始まる。
――小説家、永井荷風(1879~1959)
目標に向かって努力し成功すると、それがどんなにささいなことでも、達成感を得られますよね。それまでの苦労が全て報われたように感じます。
失敗をして悔しい思いをすることもよくあります。そんなとき、努力が無駄だったと感じるかもしれません。逆に、努力にこそ意味があったのだと自分を納得させることもあるでしょう。
しかし実際には成功しても失敗しても、それまでの行動の「価値」は変わらないはずです。
誰かを笑顔にしようとして行動し、望む結果が得られなかったとき、その思いやりは価値を失うのでしょうか?
失敗した経験をばねに自分を奮い立たせることも大切ですが、苦しい思い出は全てポジティブに変換できるものなのでしょうか?
行動に成功というゴールを設けると、その行動が「過程」になってしまいます。過程で得られたものは、成功と失敗にひも付けられてしまい、本来の価値を失ってしまうのです。
結果だけに目を向けてしまうと、過程で得たものを見落としてしまう―。「全てをあるがままに受け入れる」ことが幸せだとすると、「必要以上の意味を見いだしてしまう」ことが、人間にとって最大の不幸だといえるかもしれません。