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〈文化時報社説〉お寺と地域包括ケア

2025年12月30日

※文化時報2025年11月28日号の掲載記事です。

 知人がエアコンの故障で難儀したとこぼした。自宅の裏に田んぼがあり、室外機の工事を断られ続けたという。つてを頼って何とか引き受けてくれる業者を見つけたのだが、こう言って表情を曇らせた。

 「人付き合いのない独居世帯や高齢世帯、8050問題=用語解説=を抱えた家庭でもし同じようなことがあったら、どうしていいか分からないと思う」。取り残された気持ちになって幸せに生きることを諦めたり、追い込まれて社会を恨んだりするのではないか―と心配するのだ。

 今夏の日本列島は記録的な猛暑に見舞われ、命の危険を避けるために冷房を適切に使うことが、政府や自治体から求められた。エアコンは今やぜいたく品ではなく、最低限度の暮らしを営むための生活必需品であり、ライフラインに等しい。

 だが、工事業者を探すための福祉サービスは見当たらない。地域包括支援センター=用語解説=や担当のケアマネジャーが相談を受ければ、善意で対応するかもしれないが、それは昨今問題になっている業務外の「シャドーワーク」に他ならない。

 公的支援からこぼれ落ちる困り事は無数にある。介護保険で動く福祉職に、こうした生活上の〝隙間〟を埋める役割まで背負わせれば、燃え尽きと人材不足に拍車をかけるだけだ。

 国が構築してきた地域包括ケアシステム=用語解説=の目標年限が、まさに今年である。医療、福祉、住まい、生活支援が一体となった仕組みを掲げながら、現場では「誰が最期を引き受けるのか」という問いが宙づりのままだ。

 ここを起点に、お寺が前面に出るべきではないか。

 檀信徒や住民と顔の見える関係を持ち、生老病死に寄り添う寺院住職は、隙間を埋める地域の要となるにふさわしい。まず丁寧に話を聞き、エアコン修理から看取(みと)りまで、最適な専門家につなぐ。もちろん一人で抱え込む必要はない。

 葬儀や法要、年中行事の場でさりげなく声をかける。寺報や会員制交流サイト(SNS)で情報を発信し、寺子屋やサロンを開いて顔の見える関係を広げていく。そうした地道な営みの積み重ねが、孤立死や自死を防ぎ、「この地域で生きていてよかった」と感じられる共助の土台になるはずだ。

 冒頭の知人は「持つべきものは友人・知人と、そこからの信頼できる情報やご縁だと、つくづく思った」と語った。本人は宗教関係者ではないが、「お寺や教会が中心になって紡いでいくのがいいね」と水を向けると「その通り!」とうなずいた。

 宗教者は、間違いなく社会から期待されている。それにどう応えるかが、地域包括ケアシステムの成否を左右するに違いない。

【用語解説】8050問題(はちまるごーまるもんだい)

 ひきこもりの子どもと、同居して生活を支える親が高齢化し、孤立や困窮などに至る社会問題。かつては若者の問題とされていたひきこもりが長期化し、80代の親が50代の子を養っている状態に由来する。

【用語解説】地域包括支援センター

 介護や医療、保健、福祉などの側面から高齢者を支える「総合相談窓口」。保健師や社会福祉士、ケアマネジャーなどの専門職員が、介護や介護予防、保健福祉の各サービス、日常生活支援の相談に連携して応じる。設置主体は各市町村だが、大半は社会福祉法人や医療法人、民間企業などに委託し運営されている。

【用語解説】地域包括ケアシステム

 誰もが住み慣れた地域で自分らしく最期まで暮らせる社会を目指し、厚生労働省が提唱している仕組み。医療機関と介護施設、自治会などが連携し、予防や生活支援を含めて一体的に高齢者を支える。団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに実現を図っている。

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