2025年10月21日
※文化時報2025年7月29日号の掲載記事です。
依存症回復支援施設「リカバリハウスいちご」で働くようになって何年かしたころから、外に向けた発信、啓発活動の大切さを実感しました。

もともと自助グループのメンバーとしては刑務所や精神科病院を訪問して自分自身について分かち合うメッセージ活動をやってきましたが、リカバリハウスいちごとしてもそれらをやっていくことは、社会においての責任でもあるのだと思うようになりました。
利用者さん一人一人に対しての責任同様、リカバリハウスいちごがここにあることを知ってもらえているから、困っている本人や家族さんがつながってこられる。ここで活動していても、知ってもらっていなかったらつながるにもつながれない。そのことを強く感じました。
いくつかの大学からお声掛けいただき、最初は出前講演として、リカバリハウスいちごから利用者さんとスタッフで訪問して、取り組みや体験談を分かち合ってもらう機会をつくりました。
その体験自体が利用者さんにもスタッフにも、自分たちを省みるとてもいいきっかけになっていて、社会参画の実践になっていました。また聴講された学生さんからのコメントにアディクション(依存症)領域の新たな問題点を見いだしていけるなど、本当に貴重な機会になってきました。
私が個人的にうかがわせてもらった大学やセミナーでも、いろんな学生さんや社会人の方々と出会いました。依存症を持った人を見るのが初めてという学生さんが「依存症の方の話を聞くのは初めてなのに、自分の中にはすでに依存症とはこういう病気で、依存症の人たちはこういう人たちというイメージがあったけど、これって本当はおかしなことなんですよね? だって、本人を知らないのに」とコメントし、これまでの予防教育がアディクション領域に与えてきた弊害を感じたこともありました。
また弊害だけでなく、「予防教育があったおかげで、私や私の友人は薬物に手を出さなかった」という意見を聞くなど、学生さんたちと分かち合わなければ生まれなかった新たな視点が、自分の中に芽生えました。