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「文化時報」コラム

㉛道先案内に訪れる

2023年4月22日

※文化時報2022年11月18日号の掲載記事です。

 お大師様は、密教の聖地をどこに定めようかとお探しになっていた時、白と黒の2匹の犬に出会い、案内されて、高野山に至られたそうです。

傾聴ーいのちの叫び

 余談ですが、修行中、精神が研ぎ澄まされたのか「犬が見える!」とのたまった者がおりまして、すわ、果たして白犬と黒犬か?!と色めき立ったところ、「ぶち」という答えに一同脱力したという出来事がありましたが、それはさておき。

 大津にあります三井寺(園城寺)も、智証大師様が赤尾、白尾、黒尾の三尾のウサギに導かれてかの地に至り、建立されたそうです。古くは、日本神話において、神武天皇を大和の橿原まで案内したのは八咫烏(やたがらす)だったというのも有名なお話。そういえば、桃太郎も、キジ、サル、イヌが、鬼退治への道先案内人でした。

 どうやら古来より、さまざまな動物たちが、人間を聖地へ、超異次元へと、導いてくれていたようです。

 はて…。先日、病棟でお話をさせていただいたあの方、しきりに「あそこにタヌキがいる」と部屋の隅を指さしておいででした。もちろん私には見えないのですが「こっちを向いて尻尾を振っている」だの、「腹が空いているようだ」などと、やけに現実味のある描写です。

 そのうち、ご自分用にと買ってあった菓子を袋から取り出して、そちらに向かって放り投げる始末。ご覧になっているのがタヌキだけにこちらも化かされたのか、だんだんと見えるような気になってきたものでした。

 お迎えに来てくれたのでしょうね。私の体感ですが、だいたい亡くなる1カ月前くらいから、半数以上の方に、なにがしかのお迎えが見えるようです。動物とは限らず、とうに亡くなられている親御さんだったり、おばあさま、おじいさまだったり。赤い水引が部屋の天井から飾り下げられていて、日増しに数が増えていくというのもありました。

 イヌでもウサギでも水引でもかまいません。道中、楽に、滞りなくいかれますように、しっかり道先案内、お願いいたしますよ。

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