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「文化時報」コラム

㉜鬼が一夜で積んだ石段

2023年5月1日

※文化時報2022年12月2日号の掲載記事です。

 小学生の頃から「あちこちに行く仕事がしたい」と思っていたのですが、おかげさまで夢かなった今日この頃。行かせていただく先が決まりましたら、地図とタイムスケジュールをにらんでピンときた「ここ!」をお訪ねするのを、小さな楽しみとしております。

傾聴ーいのちの叫び

 先日は、男鹿半島にある「赤神神社五社堂」を訪ねました。JR男鹿線の終点男鹿駅から徒歩2時間半。いつもなら躊躇(ちゅうちょ)なく決行なのですが、今回は時間の限りもあり男鹿駅からタクシーです。

 道中、運転手さんが「お客さん、靴はどんなの履いてる?」と確認してくださいました。五社堂までは、なんでも「鬼が一夜で積んだ」らしい999段の石段を上るそうです。がぜん、張り切る私。「やうやうたどり着きにけり」となることが花を添えますからね。

 本当は一晩で千段積みたかった鬼は相当急いだのか、石段は大小さまざまな石で造られており、手応え十分でした。むしろ登山。上り切った先の急に開けた平地に、五つの社が一直線に並んで立っています。「ああ、ここはいらっしゃる」。空気の重さが違いました。

驚いたのは、石段の途中にお大師様がお造りになった「姿見の井戸」があったこと。「また、出た!」。行く先々で実によくお大師様の痕跡に遭遇します。いったいどれだけ歩き回っておられたのでしょうね。

 「大丈夫だったかい」。待っていてもらった運転手さんの笑顔に迎えられ、海沿いの道を男鹿駅まで戻ります。右手に広がる日本海。海岸にはずらりと並ぶ風力発電の風車。なんとものどかで、雄大な風景です。

 「いい景色でしょ。前は魚もよく揚がったんだ。でも、これが回り始めてからすっかり取れなくなったって。知り合いの漁師も、みんなお手上げだよ」。海の中に伝わるモーター音が原因かもしれない、とのことだそうです。

 くるくる、くるくる。人間が加えたものが、大いなる自然のリズムを壊す。鬼が999段で断念したのは、千段を完成させなかったのは、そういうことなのかもしれないな。

 

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