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「文化時報」コラム

〈40〉物語を書き換える

2023年7月25日 | 2024年8月5日更新

※文化時報2023年4月14日号の掲載記事です。

 日々、さまざまな出来事があります。「時間」とは「出来事が積み重なったさま」を指す言葉なのでしょう。でも、その積み重なったあれこれは、事実そのものではありません。私たちは事実を認識したとき、瞬時にして物語をつくり、物語として蓄積していくのです。

傾聴ーいのちの叫び

 例えば、ある人が亡くなったとしましょう。事実は、心臓の鼓動が止まったということだけです。そこには、是非もなく、可否もありません。でも、その事実を見て、Aさんは「幸せな人だった。きっとこれからも天国に行って楽しくやるだろう」という物語をつくります。でもBさんは「まだ死にたくなかったに違いない。未練で成仏できないだろう」という物語をつくるのです。

 自分でつくった物語が、自分にとって非常に苦しいものだったとき、人はスピリチュアルペインを抱えるのだと考えています。

 そうであれば、その物語を書き換えてしまえばいいのです。物語の書き手は自分ですから、書き換えることも自分でできるはずです。むしろ、自分にしかできません。
 
 たとえば、自分にとって非常につらい物語をつくってしまい、それに囚われて眠れなくなってしまったとしましょう。医者にかかってどうしても眠れないと訴えれば、薬を処方してくれるはずです。結果、眠れるようにはなったのですが、今度は胃の調子がおかしくなってきた…。これは、抱えている物語が書き換わっていないことが原因です。

 薬は身体に出ている症状は楽にしてくれますが、物語を書き換えてはくれません。やはり、自分がつくった物語を書き換えることができるのは、自分だけなのです。

 さて、問題は、物語を書き換える方法です。私が最も有効だと感じているのは、「語る」ことです。何度も何度も繰り返し語るうちに、物語は少しずつ変わっていきます。「話す」ことは、抱えているつらい物語を「放す」ことなのです。

 スピリチュアルケアとは、「物語の書き換えのお手伝い」だと思っています。

 

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