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「文化時報」コラム

㊾生活を支えるとは

2023年11月7日

※文化時報2023年9月1日号の掲載記事です。

 今、訪問診療、訪問看護、訪問介護と並んでスピリチュアルケアチームが参入し、協働で在宅での終末期をサポートするという初めての挑戦をしているところです。チームメンバーは9人。全員、大慈学苑の「スピリチュアルケア実践講座」「スピリチュアルケアトレーニング」を受講・修了して、日本スピリチュアルケア実践協会から「スピリチュアルケアリーダー」の認定を受けた方々です。

傾聴ーいのちの叫び

 さて、先日こんなことがありました。

 ある日の朝5時に伺うと、独居のご本人がベッドからずり落ち、壁との間に挟まってしまっています。慌てて各所に電話しました。

 24時間体制をうたっている訪問看護が答えて曰(いわ)く「どんなに早くても訪問は8時半を過ぎる」。同じく24時間対応のはずの訪問診療は「訪問看護を待つしかないです。皮膚トラブルが生じたら対応します」。訪問介護は、電話すら通じませんでした。

 さて、困りました。私1人の力ではどうにもならず、かといって、あと3時間以上このままで放置するわけにもいきません。結局、スピリチュアルケアチームを招集して事を収めました。

 私も看護師をしておりますので、シフトやコストの関係で、自由に動けないのはよく分かっています。でも、生活するということは、時間が切れ目なく延々と続くということです。そして、事件は、勤務時間内だけに都合よく起こってはくれません。

 24時間のうちのたった30分を請け負うだけで、どうしてその人の「生活」を支えることができるでしょう。「おひとり様でも家で死ねます」なんて、簡単に言うもんじゃありません。

 その点、医療点数やシフトや業務内容に縛られないスピリチュアルケアチームは、迅速かつ臨機応変に対応することができました。

 ようやくベッドに戻ったご本人から、大きな吐息が漏れます。「ありがとう。生きた心地がしなかった」。これもまた、スピリチュアルケアといっていいでしょう。

 9人と1人の夏が、過ぎていきます。

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