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「文化時報」コラム

〈54〉チームKの学び

2024年1月6日 | 2024年8月5日更新

※文化時報2023年11月17日号の掲載記事です。

 夏から活動してきた「チームK」が、解散しました。独居で暮らすKさんのスピリチュアルケアを目的とした、訪問スピリチュアルケアチームです。

傾聴ーいのちの叫び

 日本には、かなりきめの細かい医療福祉介護のネットがあります。でも、その網の目をことごとくすり抜けてしまうのがKさんでした。結局、在宅での看取(みと)りとなったわけですが、そこにもさまざまなハードルがありました。

 そもそも、Kさんはまだ60代前半でしたので、介護保険非適用です。抱えている身体の不調が、「特定疾病」に該当しないのです。訪問看護、訪問診療には入っていただけましたが、これもまた、Kさんの状況では回数に制限があります。

 世の中、どんなことでもそうかもしれません。白(自分できちんと何でもできる)か黒(自分では何もできない)、はっきりしていればサポートもたやすいけれど、灰色(自分で何とかやれちゃうけどできていない)って、手を出しにくいものですよね。在宅療養開始時のKさんがまさに灰色でした。

 でも、時間の経過とともに身体状況は変化します。ふた月もしないうちに介護保険のサービスをフルで利用できる状態になりました。

 ところが、Kさん、いい子じゃなかったんですよ。暴言を吐くのです。「うるせえ!」「触るな!」「出てけ!」これが介護拒否と見なされて、ヘルパーさんは帰ってしまいます。1日24時間中、やっと手に入れた30分の介護時間なのに!です。

 結局、残りの23時間30分を、チームKがサポートすることになりました。こう申しますと慈愛に満ちた美しい物語をご想像なさるかもしれませんが、私たちが目の当たりにしたのは、決して「情」だけでは乗り切ることのできない現実と、そして「情」なくして乗り越えることのできない現実でした。

 今月末に、今回のケースを振り返りながら、在宅での看取りとスピリチュアルケアの可能性について考える勉強会を開きます。よろしければ、ご参加ください。

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