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インタビュー

橋渡しインタビュー

片麻痺でも楽しく料理! チームLEO(レオ)

2023年4月19日

 脳卒中を発症した女性3人が結成した当事者の会「チームLEO」。脳卒中フェスティバルというイベントを通じて出会った左半身麻痺の「なお」「ミチャボ」「ひろ」が、2019年に片手で作る料理サークルを立ち上げたのが始まりだ。コロナ禍にも負けず、日々、片手でできる活動や当事者向けのお役立ち情報を、動画投稿サイト「ユーチューブ」や会員制交流サイト(SNS)で発信している。

 「今でも治ると思ってしまう」。「なお」こと金子尚子さん(53)は、そう語る。

 18年9月に脳梗塞で倒れた。当時高校生だった息子たちに、手作りのお弁当を持たせられなくなった。周りの入院患者は高齢者が多く、落ち込んだが、退院する前にリハビリで卵焼きを作る練習をした。何とか片手で作れたことで「これならできるかも」と、かすかな希望を感じた。

 「ミチャボ」こと川尻美佐緒さん(65)は、10年前に脳梗塞を患い、口にも麻痺が残った。昔から料理をするのが好きで、入院中も「どうしたらまた料理が作れるだろうか」と考えていた。

 入院中の外泊で、久しぶりに自宅のキッチンに立った。片手で作った料理を家族に初めて振る舞い、喜んで食べてくれた皆の顔を見て「これからも料理で家族を笑顔にしたい」と思った。

 薬剤師として働く「ひろ」こと下沢寛美さん(58)さん。若い頃から母親のいない環境で育ち、家事と仕事を両立していた。

左から「ひろ」さん、「ミチャボ」さん、「なお」さん(提供画像)
左から「ひろ」さん、「ミチャボ」さん、「なお」さん(提供画像)

 脳梗塞で倒れてからは、懸命にリハビリを行い、家に戻った。その後は片手で3食を作ることが日課となり、徐々に仕事にも復帰。「自分のことは自分でやる」と気持ちを奮い立たせて、現在も自分のペースで働いている。

 そんな彼女たちをつないだのは、東京で開かれた脳卒中フェスティバル(脳フェス、https://noufes.com/)だった。

 障害者と健常者が共に楽しめるファッションショーや音楽ライブ、スポーツ大会などのお祭り。装具の相談会や脳卒中当事者の医師による講演など、多種多様な催しがあり、3人はたまたま料理班の打ち合わせに同席したという。そこで「片麻痺があっても、工夫次第で料理はできる」という同じ思いの3人がすっかり意気投合。自分たちで料理サークルをつくろうと決意した。

コロナ禍での料理活動

 チームLEOの活動拠点は、東京都障害者福祉会館(東京都港区)にある。19年に結成して初めて作ったのは、ハロウィーンの料理だった。サンドイッチやカボチャの茶巾絞りにチャレンジしたという。

 その次は、募集して訪れた他の参加者も一緒に、クリスマス会のケーキ作りを行った。すべり出しは順調だったが、年が明けた20年にコロナ禍が到来。人に会えない自粛生活が始まってしまった。

 その間も同じ症状を持つ当事者を孤立させないよう、オンラインで対話や相談を行った。病気を発症して立ち直れず、精神のバランスを崩して引きこもりがちになる患者を元気付けたいとの思いからだった。

 チームLEOの3人も、片麻痺を患ってすぐに現在のような活動ができたわけではない。それぞれに葛藤を抱えながらも「くよくよしても仕方がない、第二の人生を楽しもう」と考えられるようになった。

 ユーチューブで配信を続けている料理動画は、撮影や編集も自分たちで行っている。きのこの炊き込みごはんやシチューなど、さまざまなメニューを片手で作り、安全な調理方法を伝えてきた。

https://youtu.be/x_v66jQA_wI

デイサービスで料理を振る舞った(提供画像)
デイサービスで料理を振る舞った(提供画像)

 昨年秋には、ひろさんの紹介で、デイサービスで昼食を作るボランティアを行った。レシピ考案から調理まで全てを担当。ご飯の炊ける匂いや野菜を切る音を味わいながら、20食分の食事を作り、利用者に笑顔で食べてもらえた。3人にとっての大きな一歩だった。

自分のやり方で工夫すればいい

 コロナ禍で人と一緒に料理を作ることが難しくなった一方、片手で行う陶芸にもチャレンジしていたミチャボさんは、補助具の開発や販売などにも意欲的に取り組んだ。

趣味の陶芸で作るかわいいお皿(提供画像)
趣味の陶芸で作るかわいいお皿(提供画像)

 実際に商品化したものもある。「片手deぬれ―る♪(https://noufes.theshop.jp/items/42016967)」は、片手でもパンにバターが塗りやすくなるお皿。「食パン型のお皿で塗るとパンが滑らないことを発見したんです」と、当事者ならではの視点で制作した。

 一般的な福祉用具はたくさんあるが、値段が安いわけではない。できるだけ安価に抑えるなら、100円ショップで材料を購入し、使いやすいようにアレンジを加えると、自分で便利なキッチングッズができるという。

 例えば、肉を切る時は、まな板と肉を洗濯ばさみで挟み、キッチンばさみでカットする。他にも小さい吸盤をシンクの底に貼り付け、ハンドブラシを設置して野菜をこすれば安定して洗うことができる――など、調理を簡単にするコツはたくさんある。

 自分の使いやすい方法で料理を作れば、生活もしやすくなり、自然といろいろなことに前向きになる。そんなきっかけが料理にはあると、ミチャボさんは考えている。

 「家族に一品でもおいしいものを食べさせたい、奥さんにお茶を入れてあげたいなど、当事者の方それぞれに目標ができればいいなと思って」と話す。

料理は最高のリハビリ!をモットーに(提供画像)
料理は最高のリハビリ!をモットーに(提供画像)

 なおさんは「病気になっても1人ではないと伝えたいと思っています。チームLEOは料理教室ではなく、あくまでサークル。先生に教わるのではなく、みんな平等。気持ちの共有できる人たちとつながれば、楽しく生きていけると思えます」とほほ笑んだ。

 3人の取り組みは脳フェスの公式ユーチューブで取り上げられている。片手でできる調理方法はいくつもあり、健常者でも参考になる情報だ。

 チームLEOの名前の由来は、3人とも8月生まれの獅子座だったこと。ある日、突然逆境に立たされた3人だが、料理に対する情熱とライオンのような強さで、片麻痺とともに生きる第二の人生に、楽しさを見つけられた。

 いつ病気になってしまうかは誰にも分からないが、彼女たちの勢いからは、たとえ病気になっても暗くならずに生き抜ける力をもらえる。

チームLEOのInstagram(https://www.instagram.com/leo_katate_de_cooking/

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