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お寺と福祉の情報局

「ここは遊び場」重心型の放課後デイ

2025年1月13日

 2021年4月に開設した「NPO法人laule’a (ラウレア)遊びリパーク リノアたまプラ」(横浜市青葉区)は重症心身障害=用語解説=のある子や医療的ケア児=用語解説=を対象に二つの福祉サービスを展開。未就学児から18歳までの支援を行う。「一度きりの人生をとことん楽しもう」とさまざまな遊具を取りそろえ、子どもたちと真剣に向き合っている。

預かり場所でない重心型施設

 法人名のlaule’aはハワイ語で幸福・幸せという意味がある。障害の有無にかかわらず、子どもらしく「遊び」を楽しみ、育める場所として開設された。

(写真1:「遊びリパーク リノアたまプラ」管理者の安田さん(右))
「遊びリパーク リノアたまプラ」管理者の安田さん(右)

 リノアでは小学生から高校生までが通う「放課後等デイサービス」と未就学児向けの「児童発達支援」を行い、現在は神奈川県内に五つの事業所を展開している。

 このような通所支援サービスは「一般型」と「重心型」という二つの区分に分かれており、全国では圧倒的に一般型の施設が多い。リノアは後者の重心型で、重度の知的・身体障害を持つ子どもたちが対象の施設になる。

 管理者の安田一貴さん(38)によれば、重心型施設はケアが中心で、排泄(はいせつ)や入浴のほかは、横になって絵本を読むなど、静かに過ごすことが一般的だった。その中でもリノアは遊びに特化し、子どもたちが活発に動ける環境をつくっている。

 各家庭の事情を聞き、「子どもたちの親には、いろんな体験や遊びをして育ってほしいという切実な思いがある」と安田さんは話す。

アウトドアの遊びを体験

 現在リノアでは、毎日定員5人を受け入れている。看護師やセラピスト、保育士が常駐してり、安田さん自身も理学療法士の資格を持つ。

 施設内には大きなトランポリンを設置。体の重みでロープを滑走する「ジップライン」を取り付けており、ベルトなどの安全器具を装着した子どもたちが笑顔で滑っていた。公園などでは到底できないと思われることに、あえてチャレンジできるのがリノアの魅力だ。

 

(写真2アイキャッチ兼用:ボールを抱えてにっこり)
ボールを抱えてにっこり

 別室には、光るボールプールとオランダ発祥のリラクゼーション部屋「スヌーズレンルーム」を設けている。屋外にはスタッフが製作した車いすで乗れるコーヒーカップもある。

 さぞかし子どもたちは全員喜んでいるのだろうと聞くと「いや、そうでないこともあります」と安田さん。遊具によって、全く興味を示さない子や嫌がる子もいるなど、反応はさまざまだ。

 「そういうときは『あ、今日はハマらなかったな』と。でも、それでいいんです。体験して自分に合うこと、合わないことを知ることも大事ですから」

 もちろん命が危ぶまれるような遊びはせず、細心の注意を払いながら、たくさんの経験をしてほしいとのこと。だが、子ども特有の活発な動きにはリスクが高い。そのためには保護者の理解が必要不可欠だ。

 「確かにリスクはあるけど、どこまでできるか一緒に考えてほしいとお願いしています」

 夏には施設のウッドデッキに大きなプールを設置。気管切開をした小学生を、細心の注意を払いながらプールに入れたこともある。あおむけになってぷかぷか浮かびながら、人生初めての経験に、気持ちよさそうな表情を見せたという。

 

(写真3:支援員と一緒にプールへ)
支援員と一緒にプールへ

 感激した家族は、すぐ学校側に報告。その子はそれ以降、リノアと同じやり方でプールの授業に参加できるようになった。

 「僕らがやった行動が、その子の可能性を広げるきっかけになれればうれしい」と安田さんは笑顔で話す。

楽しいから行きたくなる

 子どもを預ける母親が、罪悪感を感じたのか、「預けちゃってごめんね」とわが子に謝る姿を安田さんは目にしたことがある。ショックだった。

 「僕はリノアを『楽しい場所だから遊んでおいで』と、家族が気持ち良く送り出す場所であってほしい」

 

(写真4:楽しいことには何でも挑戦)
楽しいことには何でも挑戦

 健常の子どもも一緒に遊びたくなるような場所をつくるのが、リノアの狙いだ。同じ遊具で遊ぶことで互いに成長できる機会をつくるため、通所する子どもたちのきょうだいには「いつでも遊びに来ていいよ」と声をかけている。

 また、スタッフの子連れ出勤を認めており、安田さんも自宅から2人の子どもを連れてくることがある。
 
 いつの時代も子どもは遊びから学ぶ。友達との関わりを通して、力加減やコミュニケーション、他人への思いやりといった生きる上で大切なことを身に付けていく。いくつになっても、子ども心を忘れないでいることが大切だ。

【用語解説】重症心身障害

重度の知的障害と重度の肢体不自由が重複している障害。児童福祉法第7条第2項に定義がある。一般的に「重心」と略して呼ばれる。人数は2012年4月1日現在で全国に約4万3千人と推計された。

【用語解説】医療的ケア児

 人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童。厚生労働省によると、2021年度時点で全国に約2万180人いると推計されている。社会全体で生活を支えることを目的に、国や自治体に支援の責務があると明記した医療的ケア児支援法が21年6月に成立、9月に施行された。

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