2025年5月24日
「人生最後の食事で何を食べたいですか?」
雑誌やテレビなどでの著名人へのインタビューで、たまにこうした質問がでることがあります。著名な資産家が「塩おにぎりとみそ汁」と答えるなど、その人の意外な一面が垣間見られる、なかなかにユニークな質問です。
同じように介護の現場では、もう自分の口で食べることが難しくなった入居者に対して、スタッフが(さすがに「人生最後」と直接口にこそしないものの)「何か食べたいものがありますか」と希望を聞くことがよくあります。
それが「お酒」「アイスクリーム」などであれば、用意して口にしてもらうこともできます。しかし「○○ホテルのレストラン」などのリクエストには、施設側の対応力や安全性の面から応じることが難しいようです。
こうしたニーズに応えようと、高齢者施設を訪問しているある歯科衛生士は、本来の業務である口腔(こうくう)ケア以外にも「人生最後の食事リクエストをかなえる」というサービスを介護保険外で提供しています。
しかし、実際にはなかなかに大変なようで「夫と初めてのデートで行った」とか「子どもたちが小さい頃に家族で通った」という店の食事を希望されることも多いとか。何しろ50年も前の話ですから、店自体がなくなっていたり、シェフが引退したりしているケースがほとんどです。
そういった場合でも、探偵さながらにあらゆる情報を駆使して、当時その店で働いていた若手が経営する店を探しだすなどして、師匠の味を再現してもらったり、レシピを教えてもらったりします。
もちろん、それにはかなりの経費が掛かりますから、依頼者への請求額は何十万円にもなります。それでも年に4~5件程度の依頼があるそうです。