2022年11月28日
札幌のとある高齢者住宅は医療法人が運営しており、建物に訪問看護、小規模多機能などを併設していて、医療対応が必要な人でも生活できるのが特徴でした。ある日、そこに1本の電話がかかってきました。
「根室に住んでいるのですが、そちらに入居したいと思いまして…」
札幌~根室間は420キロほどあり、東京~名古屋間よりも距離があります。
「ありがとうございます。それで、札幌にはご家族やご親戚でも…」
「ずっと根室なので、誰も知人はいません。札幌には若い頃に数回行っただけです」
高齢者が縁もゆかりもない400キロ以上離れた街に引っ越すというのは驚きですが、北海道ではこうしたケースが多いそうです。
理由としては、まず北海道では、札幌とその周辺以外では、日常的な買い物でも何十キロも先まで行かなくてはならないことが多く、道外の人とは移動時間や距離に対する感覚が全然違うとされることが挙げられます。また、先祖は開拓のための移民という人が多いためか、「住む場所を変える」ことに対して抵抗感が少ないともいわれています。
一般的に、大都市圏では要介護者専用高齢者住宅の商圏は半径3キロ程度といわれますが、北海道では他物件との差別化が図れれば、その100倍ぐらいの商圏があると考えられます。
それと正反対なのが京都です。「100年以上前からここに住んでいた」という人もいて、「京都の中でも、どこに住んでいるか」という点にプライドを持つ人も多いためか、引っ越しに消極的です。
京都のある高齢者住宅の関係者は「商圏はせいぜい半径1.5キロ程度」と語ります。ただし、比較的元気な高齢者が「老後は京都に住みたいと思っていた」と、入居を申し込んでくることもよくあるそうです。