2023年9月13日 | 2024年8月9日更新
仏教において、お坊さんになるには出家が必要です。出家したお坊さんには、厳しいルールがあるイメージをお持ちの方もいるかもしれません。飲酒や肉食、結婚も許されない…。ところが、そんな厳しい生活を送っているお坊さんは、日本にはほとんどいないのです。今回は、お坊さんの戒律について見ていきましょう。
元々仏教にはさまざまな戒律がありました。出家した修行者が守らなければならない具足戒では、男性は250、女性はなんと348もの戒があり、それを守って生活するようにと教えられていました。
在家信者も守るべきだとされていた五戒という最も基本的な戒律の中に、不飲酒戒(ふおんじゅかい)があります。文字通り、お酒を飲んではならないという戒です。昔は、仏教を信仰する者にとっても飲酒は厳禁だったのです。
次に肉食です。今でも精進料理をいただけるお寺が残っているように、肉を食べることはタブーとされてきました。由来は、先ほどの五戒の中で、生き物を殺してはならないという不殺生戒があるためです。こうした理由で、お坊さんは動物の肉を食べられませんでした。
最後に、妻帯です。修行をする上では自分の欲望すなわち煩悩を、一切捨てなければなりません。特に性欲は、食欲や睡眠欲と並ぶ三大欲求でもあるように、とても強いものです。そのため、男女の修行僧は修行場所を分け、互いに接触しないようにしていました。女人禁制の区域もその名残です。それほど厳しく取り締まっているため、僧侶が結婚して妻と暮らすことは、許されることではありませんでした。
しかし1872(明治5)年、明治政府により「今より僧侶の肉食・妻帯・蓄髪(ちくはつ)は勝手たるべき事」という内容の太政官布告(だじょうかんふこく)が出され、以後日本に僧侶の肉食や妻帯が広がったのです。
ちなみに、浄土真宗の宗祖である親鸞聖人は、あえて公然と肉食妻帯を行ってきました。それは欲望のままの行動ではなく「肉食妻帯をしていても全ての人が救われる」という事実を明らかにしたいと考えたからです。浄土真宗においてその二つは、元から禁じられていなかったようです。
日本で広まった大乗仏教では守るべき戒律が比較的少ないものの、上座部仏教では、現在も戒律をしっかり守っているところが多くあります。250もあると挫折してしまいそうですが、自分の中の戒を一つ決めて生活するのも、悪くないかもしれませんよ。