2023年10月3日 | 2023年12月5日更新
障害者の親やきょうだいなど親族の立場にある専門家たちでつくる一般社団法人「親なきあと」相談室関西ネットワーク(藤原由親・藤井奈緒代表理事)は8月27日、大阪市立青少年センター(大阪市東淀川区)で第32回セミナーをオンライン併用で開いた。同ネットワーク相談員の2人が、生命保険信託を使った財産の残し方について解説した。
生命保険信託は、万一のときに財産をつくりだす生命保険と、残された財産を安全に管理する信託を融合させた商品。保険金をまとめて渡すのではなく、定期的に支払う特徴がある。
講師は外資系金融機関に勤務する同ネットワーク相談員の芳賀久和さん(49)と坂本岳之さん(50)。芳賀さんには、知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害の双子の息子が、坂本さんにはダウン症の一人息子がいる。
講義の前半では、芳賀さんが障害のある子にお金を残す際の注意点を紹介。障害の程度に応じて支給される障害基礎年金が、高齢者が受け取る老齢基礎年金と同額であることを示した上で、重度で生活介護を受けている人も軽度で就労継続支援B型事業所=用語解説=で働いている人も、月額約8万2千円が収入の目安になると指摘した。
その上で、グループホームは月額8万円を超えない範囲で利用料金を設定している事業者が多く、余暇や趣味、医療費、交通費などに必要な分のお金を残すことが大切だと強調。「定期的にお金が入ってくる仕組みづくりが、安心につながる」と語った。
続いて坂本さんが、生命保険信託の仕組みと活用事例について紹介した。
坂本さんは、生命保険信託のメリットとして、大きな財産がなくても、保険で将来生み出されるお金を使える▽保険金を一括ではなく、定期的に交付できる▽障害のある子の次に誰に残すかを決めておける▽寄付など残余財産の行き先を指定できる―ことなどを挙げた。
また、障害のある子がお金を使い切ってしまう傾向があったり、一人っ子だったりする場合は、生命保険信託でお金を残すことが向いていると説明した。
【用語解説】就労継続支援B型事業所
一般企業で働くことが難しい障害者が、軽作業などを通じた就労の機会や訓練を受けられる福祉事業所。障害者総合支援法に基づいている。工賃が支払われるが、雇用契約を結ばないため、最低賃金は適用されない。