2024年8月8日
宗教者といえば、戒律がつきもの。お坊さんには、妻帯や飲酒、肉食が禁じられていたようなのですが、実は肉食は、仏教の開祖であるブッダが禁じていたわけではありません。むしろ、肉を食べていたという話も残っているのです。一体どういうことなのでしょうか。
まず、なぜ肉食が悪いことと捉えられるのかというと、動物の肉を食べるには殺生が付きものだからです。仏教において動物や虫などの生き物を殺すことは「不殺生戒」を破るという悪い行いになります。そのため、肉を食べることも良くないことだと思われてきました。
しかし実際は、自ら殺したり、自分のために殺している様子を見たり聞いたりしなければ食べても構わない―というのが現実です。
それどころか、他人から施しを受けて生活する僧侶にとっては、それが肉であれ魚であれ、差し出されたものはきちんと頂かなければならないので、断らずに食べていたと考えられているのです。
また、一説によるとブッダは「スーカラマッダヴァ」という料理を食べたことによって亡くなったそうですが、その中身は豚肉か、あるいはキノコの一種だったともいわれ、これはブッダが肉を食べていた可能性の一つになっています。
仏教において肉食が禁止されたのは、大乗仏教、つまり中国に入ってきて以降の仏教での話です。
日本でも明治時代まではその戒律を守らなくてはなりませんでしたが、政府が許可のお触れを出してからは自由になりました。その名残は、精進料理などに見られます。
生き物の肉に関する戒律は、さまざまな宗教にあります。イスラム教なら不浄とされる豚肉、ヒンドゥー教なら神聖な存在である牛の肉、ユダヤ教では肉類と乳製品の食べ合わせ―例えばチーズバーガーなど―が禁止されています。聖典に記載されていることなので、信者は基本的にそれを守る、という価値観で暮らしています。
仏教に限らず、宗教と食べ物は世界中で密接な関係にあり、日本でも宗教に配慮した料理を提供する店が増えています。あまりタブーのない日本で、なぜそこまで厳格に定められているのかピンとこないかもしれませんが、違う価値観として調べてみると、意外なものが禁止されていることに気付けます。