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傾聴こそ原点…浄土宗が介護者カフェ立ち上げ講座

2024年12月25日

※文化時報2024年10月18日号の掲載記事です。

 浄土宗は9日、教化研修会館(京都市東山区)で、お寺での介護者カフェ=用語解説=立ち上げ講座を開いた。介護に関係する人々がお寺で分かち合いを行う活動で、これまでに31カ寺が開いている。今回受講した僧侶や寺庭婦人ら5人は、傾聴した上で教えを伝えた宗祖法然上人の姿を「教化の原点」と位置づけて介護者カフェが開かれていることや、介護を巡る現在の社会状況などを学んだ。(大橋学修)

 講師の東海林良昌・浄土宗総合研究所研究員は、宗祖の生涯を描いた国宝『法然上人行状絵図』で、法然上人の周りに子どもや女性など多様な人が描かれていると指摘。「お寺には、人々の苦を受け止める力がある。介護者カフェは、凡夫=用語解説=が凡夫に寄り添う浄土宗の教えにも適している」と説明した。

 東京都健康長寿医療センター研究所副部長の岡村毅(つよし)医師は「超高齢化社会の到来で弱さと共に生きる人が増加し、宗教を求める人も増えているが、それに応じているだろうか」と問題提起。「認知症の薬が開発されたが、発症を遅らせるだけ。認知症が病気という考え方を変えなければならない世の中になってきている」と訴えた。

 その上で、同研究所が東京都板橋区の髙島平団地で行うプロジェクトに、臨床宗教師=用語解説=が参加していることを説明。健康相談を行う医師が、医療以外の悩みがあった場合、僧侶に傾聴してもらうことで住民から好評を得ていると伝えた。

(画像アイキャッチ兼用:パネルディスカッションで語り合う東海林研究員、岡村医師、髙橋住職、山下住職(左から))
パネルディスカッションで語り合う東海林研究員、岡村医師、髙橋住職、山下住職(左から)

 昨年介護者カフェを開いた山下裕通高林寺(愛知県豊橋市)住職と髙橋宏文榮養寺(愛媛県伊予市)住職を交えたパネルディスカッションも行った。山下住職は、開催を月曜にしたことで、振替休日の際には平日に参加できない人が来るようになったと報告。髙橋住職は参加者の半分以上が檀信徒以外であることを紹介した。

介護離職がテーマ 金剛寺、25回目の開催

 9日には京都市東山区の金剛寺(中村徹信住職)で25回目の介護者カフェが開催された。産業ケアマネジャー=用語解説=の辻恵さんが介護離職などをテーマに講演。参加者が3班に分かれて、介護の悩みや看取(みと)った人を十分に介護できなかった後悔などを語り合った。

 辻さんは、家族が全ての介護を担うことで疲弊を招くとし、「介護は子育てと異なり、いつまで続くか分からない長期戦。介護サービスを利用したり、相談できる人や場を持ったりすべきだ」と話した。

(画像:介護離職をテーマに行われた介護者カフェ=京都市東山区の金剛寺)
介護離職をテーマに行われた介護者カフェ=京都市東山区の金剛寺

 その上で、今年5月の国会で育児・介護休業法が改正され、来年4月の施行で「仕事と介護の両立支援制度」が強化されると指摘。介護を受ける家族1人につき、介護者が通算93日まで休業できることや、年間5日まで介護休暇を取得できることを示した。

 中村住職は「浄土宗では、至らぬ自分であっても、全てを阿弥陀様にお任せして救っていただく。やさしい心で介護することは難しいが、至らぬ自分を自覚して、頼れるところに頼ってほしい」と語り掛けた。

【用語解説】介護者カフェ

 在宅介護の介護者(ケアラー)らが集まり、悩みや疑問を自由に語り合うことで、分かち合いや情報交換をする場。「ケアラーズカフェ」とも呼ばれる。主にNPO法人や自治体などが行っているが、浄土宗もお寺での開催に取り組んでいる。孤立を防ぐ活動として注目される。

【用語解説】凡夫(ぼんぶ=仏教全般)

 仏教の道理を理解しない者、あるいは世俗的な事柄にひたる俗人。

【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)

 被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数は24年9月現在で211人。

【用語解説】産業ケアマネジャー

 仕事と介護が両立できるよう、介護の専門知識と企業の制度を踏まえてアドバイスするための資格。一般社団法人日本単独居宅介護支援事業所協会(東京都江戸川区)が2020年に創設した。企業と顧問契約を結び、介護で悩む従業員からの相談や人事部門との情報共有、介護支援プランの作成補助を担う。

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