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医ケア児と出会う場を お寺の防災で意見交換

2022年10月19日

※文化時報2022年9月9日号の掲載記事です。

 災害時に医療的ケア児=用語解説=の受け入れを検討している浄土宗願生寺(大河内大博住職、大阪市住吉区)は8月27日、防災や医療の専門家らでつくる「願生寺防災プロジェクト」の第2回懇話会をオンライン併用で開いた。当事者と地域住民の双方から意見を聞き、必要とされる防災に寺院として取り組むのが目的。意識の隔たりを埋めるため、まずは互いが出会う取り組みが必要との認識を共有した。

防災への協力を呼び掛ける当事者の潮見純さん(左)と小西奈月さん
防災への協力を呼び掛ける当事者の潮見純さん(左)と小西奈月さん

 願生寺は、南海トラフ巨大地震や豪雨災害の発生を見据え、昨年10月から防災プロジェクトのミーティングを行っている。当事者と地域住民を招いたのは今年3月に次いで2度目で、防災看護を専門とする亀井縁・四天王寺大学准教授を司会に意見交換した。

 亀井准教授はまず、新型コロナウイルス感染拡大で地域のつながりが薄れたとして、「災害時に、支援を本当に必要とする人にどう届けるのかという課題が見えてきた」と指摘。つながりの場を提供するのが願生寺防災プロジェクトであると位置付け、防災力を高めるよう呼び掛けた。

 医療的ケアが必要な小西咲希さんの母、奈月さんは「外出先で災害に遭ったとき、知らない人にどう助けを求めるか。声を上げる練習が必要」と課題を挙げ、潮見邑果(ゆうか)さんの母、純さんは「家庭での防災には限界がある」と明かした。

 懇話会には、願生寺の呼び掛けで結成された「医療的ケア児のための防災拠点寺院ネットワーク」(医ケア防災寺院ネット)の参加寺院も出席。高野山真言宗観音院(堺市南区)の大西龍心住職は「受け入れに協力したい気持ちはある。お寺の中の何が使えて何が足りないのか、専門家の方々に教えていただければ」と求めた。

当事者・地域の間に立つ

 医療的ケアを受ける当事者と地域住民が普段から顔の見える関係をつくる必要性は、今年3月に行われた第1回懇話会からすでに指摘されていた。願生寺は来春にも住民参加型のワークショップを行うことにしており、双方の間に立つ役割が求められそうだ。

オンライン併用で行われた「願生寺防災プロジェクト」の第2回懇話会
オンライン併用で行われた「願生寺防災プロジェクト」の第2回懇話会

 懇話会に出席した医療的ケア児の親からは、わが子のことを「地域に知ってもらいたい」との声が相次いだ。ただ、必要とする支援は子どもによって異なり、一律のマニュアル化が難しいため、地域住民の理解を得るのは困難が予想される。

 また、地域住民からは「障害のある方が避難所に来られても、私たちでは何もできないのが現実。寺院で預かってもらえればありがたい」との本音や、「医療的ケアが必要でも、表に出てこない方がいる。自分から発信してほしい」との要望もあった。

 大河内住職は「出会い、共に防災を学び、訓練ワークショップで試していけば、災害発生時にお互いが助け合えるようになる。地域と話し合いを重ねつつ、当事者からニーズを聞き取りたい」と話している。

【用語解説】医療的ケア児

 人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、 痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童。厚生労働省科学研究班の報告では、2017(平成29)年時点で全国に約1万8千人いると推計されている。社会全体で生活を支えることを目的に、国や自治体に支援の責務があると明記した医療的ケア児支援法が21年6月に成立、9月に施行された。

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