2025年2月10日
※文化時報2025年2月7日号の掲載記事です。
プログラミングの国際的なロボット競技会「ファースト・レゴリーグ・チャレンジ」に挑戦する地元の小学生チームを応援しようと、浄土宗願生寺(大阪市住吉区)の大河内大博住職が設立した合同会社さっとさんがLabが全面協力している。願生寺で専門家と交流する機会などを設けたほか、必要な物品を提供。チームは今月16日に東京都内で開催される全国大会で、世界大会への出場権獲得を目指している。(大橋学修)
全国大会に出場するのは、大阪市立墨江小学校6年生9人で結成した「Brillante Solar(ブリランテ・ソーラー)」。大会では、玩具「レゴブロック」で作ったロボットを用いて作業効率を競ったり社会課題の解決策を提案したりする競技に挑戦。競技の得点やチームの協力体制を含めた総合評価で順位を決める。
ブリランテ・ソーラーは昨年12月の大阪大会で2位になり、全国大会の出場を決めた。ただ、ロボットを動かすプログラミング知識がチーム内でばらつきがあるほか、プレゼンテーションに使うため自分たちで開発したオリジナルのボードゲームの学習効果を試す機会がなかった。
保護者から相談を受けた大河内住職が、さっとさんがLabとして協力することを決め、1月19日に願生寺に地域の子どもたちを集めて、ボードゲームを楽しんでもらう機会を設けた。遊んだ後にはアンケートやインタビューを行い、効果を確かめた。
同25日には、プログラミングに詳しい経営者の鈴木粋さんと交流する機会を設け、チームのメンバーが基礎知識を学んだり、アドバイスを受けたりした。
大河内住職は「チームはどんどん成長しており、チャレンジするかっこよさと感動を伝えてくれている。そして、周りへの感謝を忘れない人間力を身に付けている」と話している。
ブリランテ・ソーラーの保護者たちが大河内住職に相談した理由は、願生寺が子どもたちに学びと遊びを提供する「寺子屋さっとさんが」を定期開催していたからだ。
人が集まる場があること、多様な分野の人と交流できることに着目し、子どもたちのプログラミングの知識や技術が向上することを期待したという。
願生寺に集まる人たちの間には、チームを支えようとする動きも出てきた。自閉症と重度の知的障害がある子ども2人を育てる片山初美さんは、活動費用の一部を寄付。逆にチームの保護者たちが、片山さんを支えようという発想になった。
願生寺は、災害時に医療的ケア児=用語解説=の避難所として機能することを目指し、イベントやワークショップを通じて地域との連携を強めている。チームの保護者たちも、子ども同士の交流が学びにつながっているとは実感していたが、障害のある人がいる家庭を支えられるとまでは思っていなかったという。
片山さんは、自身の経験をつづった絵本制作に挑戦中。保護者の大江めぐみさんは「見ず知らずの自分たちの活動に寄付してくださるとは」と心を動かされたといい、今度は自分たちが片山さんの活動を応援することを決めた。
大河内住職は、受けた恩を別の人に送り、それが循環する地域づくりを提唱ししている。「これからは『競争力』でなく『共創力』が社会を豊かにする。そのためには、人々が互いに応援し合う『応援力』が必要だ」と語る。
【用語解説】医療的ケア児
人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童。厚生労働省によると、2021年度時点で全国に約2万180人いると推計されている。社会全体で生活を支えることを目的に、国や自治体に支援の責務があると明記した医療的ケア児支援法が21年6月に成立、9月に施行された。