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お寺でeスポーツ ひきこもりの子に外出機会

2025年5月25日

※文化時報2025年2月4日号の掲載記事です。

 ひきこもりの子どもたちが外出するきっかけをつくろうと、津市の真宗高田派浄誓寺(稲森栄政住職)がeスポーツ=用語解説=のイベントを開催している。関係団体も協力し、「ゲームが悪影響を与える」という固定観念を覆す取り組みだ。リアルな体験のできる行事を組み合わせることで、さまざまな人とコミュニケーションできる場もつくっている。(佐々木雄嵩)

 稲森住職がeスポーツに着目したのは、住職継承から2年後の2017(平成29)年のこと。浄誓寺は住宅地にある小さなお寺で観光寺院でもなく、門徒が年々減少していることから、〝ファン〟を増やして盛り立てようと、地域との交流の機会を探っていた。

 マルシェやおしゃべりサロンなどを開催したところ、ひきこもりの子を持つ親などから相談を受ける機会が増えた。子どもたちが外に目を向けるきっかけをお寺につくれないかと、さまざまな催しに参加。一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU=早川英樹会長、東京都中央区)の関係者と知り合い、協力を取り付けた。これまでにお寺でeスポーツのイベントを3回ほど開催している。

(画像アイキャッチ兼用:eスポーツのイベントに参加して交流する子どもたち)
eスポーツのイベントに参加して交流する子どもたち

 稲森住職は「外出をさらに困難にしたコロナ禍が落ち着いた今こそ、やる価値がある」と力を込める。

医療・福祉とも協力

 JeSU三重県支部の森浩樹事務局長は「老若男女が安心して集えるお寺の可能性と、地縁を深めたいという住職の思いに共感して手伝っている」と語る。

 森事務局長によると、近年は各地でeスポーツの利活用に注目が集まっており、自治体主催の市民セミナーや企業の勉強会で取り上げられる機会も増えた。

 いずれも若者の流出を食い止めたい思惑があるという。

 一方、JeSU三重県支部としては、三重県内の病院や福祉施設と協力。軽度の認知症の人を対象に、リズムゲームや自動車レースゲームを使って実証実験を行っているという。森事務局長は「元気なシニアが増えて、多くの寺社で老若男女がeスポーツに興じる未来を考えると面白い」と話した。

頭ごなしに否定しない

 昨年11月17日に行ったイベントでは、さまざまな事情で保護された犬猫の里親会も開催。子どもたちが動物と触れ合える場も設けた。

(画像:合わせて行われた保護犬猫の里親会に興味を示す子も)
合わせて行われた保護犬猫の里親会に興味を示す子も

 親子で参加した男性は「ゲームは教育上問題があるとばかり考えていた。生き生きとした顔で参加し、コミュニケーションをとっている子どもの姿に驚いた」。別の女性は「子どもが『面白い』と思えるものがゲームだっただけ。外を向くきっかけになるなら、頭ごなしに否定することもないと感じた」と語った。

 稲森住職は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が洞窟の外に誘い出された天岩戸(あまのいわと)神話を例に「楽しそうな様子につられて、自分の判断でお寺に来てもらえるようになれば」と話す。

【用語解説】eスポーツ

 コンピューターやビデオゲームなどを競技として行うスポーツ。格闘やシューティングなど多様なジャンルがある。一般社団法人日本eスポーツ連合(東京都中央区)によると、日本ではファン数約776万人、市場規模約125億円と推計され、地方創生や国際交流、教育・福祉分野でも注目されている。

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