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生きづらさを抱えても 玉置妙憂さん、聴衆魅了

2025年6月3日

※文化時報2025年2月28日号の掲載記事です。

 一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室(小野木康雄代表理事、京都市下京区)は17日、大阪市立青少年センターKOKOPLAZA(ココプラザ、大阪市東淀川区)で講演会「生きて死ぬということ~生きづらさを抱えても」を開いた。非営利型一般社団法人「大慈学苑」(東京都江戸川区)代表の玉置妙憂さんが登壇。障害のある子やひきこもり当事者の「親なきあと」に悩む家族や支援者に向け、生きていくためのスピリチュアルケア=用語解説=について考え方や大切さを語った。

(画像アイキャッチ兼用:講演する玉置妙憂さん)
講演する玉置妙憂さん

 玉置さんは、自身がさまざまな相談を受けている経験から、大きな問題よりも小さな問題の複合が生きづらさを招くと指摘。言葉がけの悪い例として「生きていればいいことがある」「私はあなたに死んでほしくない」などを示し、「あなたは一人じゃない」という言い方にも「人は絶対的に一人。だからこそ、縁を大切にする」と反論した。

 また、人間は誰しも過去の記憶や死の恐怖などを入れた「スピリチュアルの小さな箱」を持っていると説明。普段は心の奥で塩漬けにしているが、生きる力が弱まって箱が開くと、スピリチュアルペインが現れるというたとえを語った。

 その上で、スピリチュアルペインは自分の存在を巡る「実存の危機」であり、自分のありようを肯定できないことによる苦しみであると定義。苦しみは語ること、聴いてもらうことによって他者と共有でき、「経験値」になると伝えた。ケアをする側が陥りがちな聴き方の悪い癖も紹介し、情報を集めること、方法論を返すこと、話をまとめてしまうことの三つを挙げた。

いかに安定し続けるか

 講演の後半には、自分自身が少し楽になる「セルフスピリチュアルケア」の方法も明らかにした。

 玉置さんは、スピリチュアルケアで最も大切なのは己の在り方であり、「いかに安定し続けるか」であると強調。「言葉という道具が使えなくなったときから、本当のスピリチュアルケアが始まるのかもしれない」とも語った。

 その上で、セルフスピリチュアルケアの「提案」として、思考の鎖を断ち切る▽言葉をメンテナンスする▽この世は諸行無常であると知る▽執着を捨てる▽自利を満たす―を掲げ、それぞれについてエピソードを交えながら考え方を説いた。

(画像:「親なきあと」に直面する家族や支援者らが聴講した)
「親なきあと」に直面する家族や支援者らが聴講した

 今回の講演会は、公益財団法人仏教伝道協会の助成を受けて無料で開催。録画視聴にも対応しており、申込者には3月1日から配信された。

【用語解説】スピリチュアルケア

 人生の不条理や死への恐怖など、命にまつわる根源的な苦痛(スピリチュアルペイン)を和らげるケア。傾聴を基本に行う。緩和ケアなどで重視されている。

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