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成仏テーマに冊子発行 物理学者との対談を縁に

2025年7月1日

※文化時報2025年3月28日号の掲載記事です。

 先祖供養や「見えない世界」を通して自分の生き方について考えてもらおうと、高野山真言宗遺跡本山観心寺(永島全教住職、大阪府河内長野市)が冊子『心の先を知るともっと楽になる』を発行した。成仏をテーマに、永島住職と物理学者や医師兼僧侶らが対談したことがきっかけ。知識を智慧(ちえ)にするため、自分で考えるワークシートも付いている。(春尾悦子)

冊子『心の先を知るともっと楽になる』
冊子『心の先を知るともっと楽になる』

 対談は昨年4月に観心寺で行われた。参加したのは永島住職と、理論物理学者で米テキサス大学上席研究員のトミオ・ペトロスキー博士▽内科医で高野山真言宗僧侶の三軒龍昌氏▽修験道宝龍院住職の有安弘靖氏▽浄土宗如意輪寺副住職の加島裕和氏▽ヨーガ療法士の倉橋陽子氏。冊子には各自の発言要旨と振り返りが掲載されている。

 表紙には、ペトロスキー博士の言葉「今、科学は仏教の答え合わせをしている」が掲げられた。博士は自身の専門である複雑系物理学に基づき「現在の私たちも死後の世界と共に存在しているという捉え方に説得力がある」と指摘した。

 三軒氏は「医療従事者も生死が経過点であると認識する方が、矛盾を抱えず患者さんとの時間を過ごせる」と提言。有安氏は「ご先祖様や神仏が自分に伝えようとしている気持ちを想像し、思いに応える生き方をすることが正しい供養だ」と説いた。

 永島住職は、対談の中で見えてきた共通する考え方として、「見えないから、分からないから『ない』とは思っていない」「その先を常に信じているからこそ〝謙虚さ〟がある」とテーマを整理。医療・介護従事者やメンタルが弱っている人、若い僧侶に向けてそれぞれメッセージを記した。

 A5判36ページ。500円。問い合わせは観心寺(0721―62―2134)。

 

「医療安心」の寺として

 冊子発行に際し、昨年12月18日には観心寺で永島住職と対談参加者らによる報告会が行われた。

永島住職と冊子に関わった人たちが出席した報告会=昨年12月18日、大阪府河内長野市の観心寺
永島住職と冊子に関わった人たちが出席した報告会=昨年12月18日、大阪府河内長野市の観心寺

 観心寺には、本堂を取り巻くように北斗七星の「星塚」がまつられている。約1200年前、弘法大師空海が如意輪観音と共に境内に勧請(かんじょう)したとされ、古代中国では生死や禍福をつかさどる星と信仰されてきたことから、近年は医療・介護従事者の参拝が多い。

 同寺も「医療安心」を掲げ、さまざまな場を設けてきた。永島住職は「医療・介護従事者こそ、星塚を一巡してから本堂で如意輪観音様にゆっくり手を合わせてほしい」と呼び掛けた。医療・介護従事者の安心が、職場の雰囲気や患者・利用者の心と体の改善に影響するのではないかと考えるためだという。

 自身は観心寺の長男に生まれ、僧侶になって約30年。「ご先祖様や仏様の見えない世界を知り、その思いを知ることが、心の問題の解決につながると信じている」と語った。

 

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