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塀の内外で福祉生かす 『獄窓記』山本譲司氏

2022年11月20日

※文化時報2022年9月6日号の掲載記事です。

 行き場のない高齢者や障害者が刑務所に入っている実態を明かした『獄窓記』(ポプラ社、2003年)の著者、山本譲司氏の講演会が8月24日、大阪市中央区の大阪府立労働センター(エル・おおさか)で行われた。出所者支援に取り組む一般社団法人よりそいネットおおさか(西口禎二代表理事)が企画し、宗教者を含む約80人が対面とオンラインで聴講。司法と福祉の連携を訴える山本氏の言葉に耳を傾けた。

福祉と司法の連携について話す山本氏
福祉と司法の連携について話す山本氏

 山本氏は元衆議院議員。01年に秘書給与流用事件で実刑判決を受け、黒羽刑務所(栃木県大田原市、閉鎖)で約1年2カ月間服役した。出所後に書いた『獄窓記』が反響を呼び、矯正施設や更生保護制度の改革に大きな影響を与えた。

 講演で山本氏は、服役していた当時、本来なら福祉の支援を受けるべき知的障害者や精神障害者、認知症の高齢者が大勢おり、出所後の行き場所がないという現実を目の当たりにしたと説明。「しゃばが怖い」「刑務所には自由がないが、不自由もしない」という声を聞いたと明かした。

 その上で『獄窓記』の出版から約20年が過ぎ、「隔世の感がするほど、この分野は前に進んだ」と強調。司法と福祉が協力して出所者の生活を支える「地域生活定着支援センター」が全都道府県に設置されたことなどを背景に挙げた。

 一方で「福祉施設は刑務所のようになっていないか。福祉が司法の肩代わりをしてはならない」と問題提起。「肩の力を抜き、生き直しの伴走をする意識で出所者を迎え入れてほしい」と呼び掛けた。

宗教者も「つながり」を

 「刑務所といえども、社会から隔絶されてはならない」。山本譲司氏が講演で語った内容は、よりそいネットおおさかが大切にする「つながり」に通じている。

対面とオンラインで約80人が聴講した
対面とオンラインで約80人が聴講した

 よりそいネットおおさかは、大阪でホームレス支援に取り組む人々が、仕事や住居をなかなか見つけられない出所者がいる問題に対処しようと、2009年に任意団体として立ち上げた。設立準備会では、やはり山本氏を招いて講演を行った。

 医療・福祉施設を持たず、会員同士が連携して出所者支援に当たるネットワーク型の活動を展開。13年から大阪府地域生活定着支援センターの運営を受託し、福祉職のための研修や当事者同士のつどい、市民向けの啓発活動も実施している。

 山本氏は「一番排除されやすい人を真っ先に手厚く支援することが、ソーシャル・インクルージョン=用語解説=につながる」と強調し、罪を犯す高齢者や障害者への支援を訴えた。

 よりそいネットおおさかの北場好信理事は「ネットワークには宗教者も参加していただいている。宗教界にも活動が広がってほしい」と話している。

ソーシャル・インクルージョン

 弱者を含めて誰も排除されず、全ての人々が社会に参画する機会を持つこと。「社会的包摂」と訳される。1970年代にフランスで「社会的排除」(ソーシャル・エクスクルージョン)が課題になって以降、主に欧州で政策目標とされている。

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