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法衣姿の「オショー」介護施設へ 利用者に喜び

2022年12月13日

※文化時報2022年9月23日号の掲載記事です。

 大阪府柏原市の地域密着型通所介護事業所(デイサービスセンター)「きょうこちゃんち」は、法衣を着た僧侶を、ボランティアとして迎え入れている。経営する白石京子さんが「利用者に喜ばれる」と考えたからだという。訪問しているのは、市内にある浄土宗安福寺の大﨑信人住職。肩ひじ張らずに利用者と接している。(大橋学修)

 「オショーいらっしゃい。コーヒーはホット、アイス?」白石さんの明るい声が飛ぶ。「きょうこちゃんち」では、敬語を用いない。「家庭内で敬語を用いることはないから」と白石さんは話す。名前もニックネームで呼び、大﨑住職も「オショー」と呼ばれる。

 大﨑住職が訪問するのは、午後1時30分ごろ。檀信徒宅に月参りに行った帰り道に立ち寄る。昼食後のレクリエーションタイムで、利用者と共にゲームや介護予防の体操などを行い、一緒におやつを食べる。

 大﨑住職が、利用者と打ち解けられるのは、自身も一人の施設利用者という意識で参加しているからだという。話し相手になろうと身構えず、自然体で振る舞っていた。大﨑住職は「利用者の方が楽しめることだけを考えている」と話した。

利用者と会話を楽しむ大﨑住職(右)と代表の京子さん
利用者と会話を楽しむ大﨑住職(右)と代表の京子さん

「みんなお坊さん好きよ」

 大﨑住職が、訪問するようになったのは昨年12月上旬。檀信徒宅での読経中に、デイサービスセンターの迎えが来たことがきっかけだった。出発準備で慌ただしくなり、大﨑住職は仏壇前に取り残された。そこで読経を中断し、檀信徒の出発を見送ることにした。

 檀信徒が送迎車に乗り込む間に、大﨑住職は、白石さんに声を掛けた。すると、「今度、事業所に遊びに来てよ」と誘われた。

 月参りの帰りになるため、法衣を着たままの訪問になる。だが、白石さんは「大丈夫。みんなお坊さん好きよ」と言い残して去っていった。大﨑住職は逡巡(しゅんじゅん)しつつも、翌日に介護事業所を訪問した。

 白石さんは、「お葬式をイメージするから、他の事業所は嫌がるかもしれない。だけど、お坊さんがいた方が面白いでしょ」と笑い、「普通のお坊さんは、堅苦しくて話も面白くない。オショーは、フットワークが軽く、偉そうじゃないからいい」と話した。

介護にアンテナ張る

 大﨑住職は、介護を受けていた人が亡くなって不要となったおむつを、必要とする人に届ける「おむつプロジェクト」を展開する。

 介護と関わるようになったのは、まだ2年ほど前。少しでも経験を積もうと、関西福祉科学大学(大阪府柏原市)が開くケアラーズカフェに通った。

 介護者カフェの開設後も、さまざまな研修会で学びを深めるとともに、画像共有アプリ「インスタグラム」を使った情報発信と交流に余念がない。人々が抱える課題に携わることがお寺の役割と考え、常にアンテナを張る。

 「最初は、お寺の将来を考えて介護者カフェを開いた」と打ち明ける大﨑住職は、こう話す。「学びを深めるうちに、本当に大切なのは、誰を主語として活動するかということだと学んだ。お寺や僧侶が主語になってはいけない」

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