検索ページへ 検索ページへ
メニュー
メニュー
TOP > 福祉仏教ピックアップ > 『文化時報』掲載記事 > 仕事と子育て、介護施設も両立 高田福祉事業協会

つながる

福祉仏教ピックアップ

仕事と子育て、介護施設も両立 高田福祉事業協会

2023年1月11日

※文化時報2022年10月28日号の掲載記事です。

 真宗高田派が母体となって設立された社会福祉法人高田福祉事業協会(津市)が、職員の働きやすい環境づくりを積極的に進めている。育児・不妊治療と仕事を両立できる事業者として、他の2事業者と共に三重県内で初めて「くるみんプラス」の認定を受けた。背景には、「困っている人に手を差し伸べる」という設立理念がある。(大橋学修)

複数の福祉サービスが一体運営される高田福祉事業協会
複数の福祉サービスが一体運営される高田福祉事業協会

 「くるみん」は、次世代育成支援対策推進法に基づき、育児休業や育児に伴う時短勤務の推進など、一定の基準を満たした事業者を認定する厚生労働省の制度。2007(平成19)年4月に始まり、今年4月には不妊治療との両立を基準に加えた「くるみんプラス」が新設された。

 特別養護老人ホームやケアハウス、保育園などの福祉サービスを展開している高田福祉事業協会は、利用者の生活の質を向上させるためには、職員の働きやすさが必要と考えている。施設運営の意思決定には合議制を採用。独自に設けた介護技術試験の合格者が昇給する制度を取り入れている。職員の向上心に応え、専任講師による各種セミナーも定期開催する。

 そうした職場環境の整備が、職員の意欲とアイデアを呼び起こす。3年がかりで独自開発した「ソフト食」は、職員の「嚥下(えんげ)食が他の食事とメニューが違うとかわいそう」との思いが開発のきっかけとなった。魚の切り身の照り焼きは、ひと目では区別できないほどの仕上がりだ。

施設内で食事する利用者(高田福祉事業協会提供)
施設内で食事する利用者(高田福祉事業協会提供)

 高林光暁常務理事は「利用者を側面から支え、自由に生活できることを重視してきた。そのためには、同じ思いを持つ職員の存在が不可欠。利用者の目線に立ちながら、職員が切磋琢磨(せっさたくま)しなければ仕事は深まらない」と話す。

行政の弱点補う

 高田福祉事業協会は1921(大正10)年に発足。18年の米騒動や株価暴落で企業の倒産が相次ぐなど、社会不安が広がる時代だった。

 本山専修寺の山門には、家を失った高齢者が居場所を求めて集まるようになり、当時の常磐井堯猷(ときわい・ぎょうゆう)法主の目に留まった。門前の所有物件に高齢者8人を受け入れるよう命じたのを機に協会の事業が始まり、以降は施設建設や事業拡大が101年にわたって進められてきた。

 地域が抱える課題を解決することを命題とした運営が続けられ、国の制度が整う前からデイサービスやヘルパー派遣を開始。社会福祉法人が運営する診療所を三重県内で初めて開設した。

 保育園の運営を始めたのも、地域の要望を受けた。昨年4月には、病気の回復期にある幼児を受け入れる「病後児保育」を開始。今年4月からは障害児の受け入れを始めた。

 高林常務理事は「困っている人を支えるという思いを貫いてきた。事業拡大は念頭になく、地域のニーズを拾い集めることが大切。行政の弱点を補っていければ」と話している。

おすすめ記事

同じカテゴリの最新記事

error: コンテンツは保護されています