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死に追いやるSNS 木村花さんの母、中傷語る

2023年4月9日

※文化時報2023年2月24日号の掲載記事です。

 浄土宗人権センターは14日、教化研修会館(京都市東山区)で教区人権同和推進委員会委員長連絡会を開き、会員制交流サイト(SNS)での誹謗中傷が原因で自ら命を断ったプロレスラー木村花さん=当時(22)=の母で、NPO法人リメンバーハナの代表理事、木村響子さん(45)を招いた講習を行った。参加した約40人は、講演を受けてグループワークを行い、SNSにおける人権問題への対応を考えた。

 花さんは、一軒家で複数の男女が暮らすインターネット配信番組に出演。SNSで誹謗中傷を受けるようになり、2020(令和2)年5月に自宅で命を断った。響子さんは現在、SNSから誹謗中傷をなくす活動に取り組んでいる。

 響子さんは「幸せな人は誹謗中傷を行わない」と話し、「ある加害者は、自己を肯定できないストレスから、花を執拗に攻撃した」と伝えた。ストレスや過労によって精神的に病み、善悪の判断が鈍る可能性についても触れた。

 きっかけとなった番組制作についても言及し、「誹謗中傷を誘発するように演出していた。視聴者はドキュメンタリーだと思って見るが、台本がなくても演出はある。撮影現場に人権はあるのか」と訴えた。

娘の死を通じ、SNSでの誹謗中傷について話す木村響子さん
娘の死を通じ、SNSでの誹謗中傷について話す木村響子さん

 その上で「花は、生後3カ月からひとり親家庭で育ったが、周囲に助けられ、見守られてきた。それぞれの人が、愛してもらっている人であることを、忘れてほしくない」と強調した。

 また、若年層がSNSで「死ね」「ばか」などの攻撃的な言葉を用いることを憂慮。語彙力を向上させて、豊かな自己表現ができるようになることを求め、「SNSには、優しい言葉のスパイラルをつくってほしい」と呼び掛けた。

遺族ケアの再考促す

 響子さんは、20年秋に誹謗中傷を書き込んだ4人を相手取り、民事訴訟を起こしている。「私の人生は、あの日に終わった。今は訴訟があるから生きていられる」と語る。

 花さんが亡くなった直後から、響子さんは刑事告発に向けた証拠集めを始めた。誹謗中傷が書き込まれた画面の保存作業を重ねるうちに、つらさや苦しさで文字が読めなくなった。響子さん自身もSNSで中傷された。

 それでも、周囲から「見ちゃ駄目」「気にしちゃ駄目」と言われた時には「分かってくれない」と傷ついた。SNSを通じて「強く生きろ」など励ましの言葉を受けることも多々あったが、「これ以上どう頑張ればいいのか」と、善意の押し付けに苦しんだという。

 むしろ、証拠集めを手伝ってくれるなど、共に行動してくれる人の存在をありがたく感じたという。「耳を傾けて、どうしてほしいのかを聞いてほしい。分かってくれる人が一人でもいれば、生きていける」と述べ、遺族へのケアの在り方について再考を促した。

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