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コロナの死を社会化 西本願寺で追悼・分かち合い

2023年5月20日

※文化時報2023年3月28日号の掲載記事です。

 龍谷大学社会的孤立回復支援研究センター(黒川雅代子センター長)は11日、浄土真宗本願寺派の本山本願寺(西本願寺、京都市下京区)で、新型コロナウイルスで亡くなった人の追悼会を開いた。遺族や医療・福祉関係者だけでなく、誰もが参列できる法要を行うことで、社会全体にコロナでの死を悼む風潮をつくろうとする取り組み。世界保健機関(WHO)がパンデミックを宣言した2020年3月11日にちなんで行った。(大橋学修)

 遺族ら232人が参列し、浄土真宗の作法で法要が営まれた。法要後には、本願寺派布教使の野村康治氏が法話を行い、聞法会館で「わかちあいの会」が行われた。

本山本願寺で営んだ追悼会に参列する遺族ら
本山本願寺で営んだ追悼会に参列する遺族ら

 「わかちあいの会」では、自死遺族に向き合う関西僧侶の会のメンバーの協力でグループトークが行われ、参列者らは「なぜ、亡くならなければならなかったのか」という悲しみを吐露。後悔や苦渋の念を打ち明け合った。

 本願寺派を代表してあいさつした弘中貴之副総務は「葬儀が思うようにできなかったケースもあると聞く。微力ながら寄り添うことができるのではないか」と話し、黒川センター長は「追悼は人生の中で一番大事なプロセス。看取りと追悼が失われると、遺族は大きな影響を受ける」と指摘した。

 参列した髙田かおりさん(48)は、沖縄で1人暮らしをしていた弟=当時(43)=を、新型コロナで亡くした。自宅療養中の死で、信じられなかったという。

 現在は「新型コロナ」自宅放置死遺族会の代表を務めており、「一つずつ整理し、前を向かせてもらえれば」と話した。

「あいまいな喪失」脱却を

 グリーフ(悲嘆)ケアに詳しい黒川センター長によると、新型コロナで大切な人を亡くした人は、感染拡大防止のためとして看取りや葬儀が十分に行えず、喪失の実感を得られないままのケースが多い。あいまいな喪失=用語解説=といわれる状態で、心身に不調をきたし、社会的孤立に陥る人もいるという。

 黒川センター長らは昨年10月、融通念佛宗総本山大念佛寺(大阪市平野区)で、遺族や医療・福祉関係者が参加する「りんどうの会」(実行委員長、弘川摩子・大阪府看護協会会長)を開き、追悼法要やグループトークを行うことで、新型コロナで失われた命に向き合った。

 今回は、誰でも参加できる追悼法要とすることで、コロナの死を社会化し、あいまいな喪失から脱却を図ろうと試みた。黒川センター長は「本来は国全体で追悼を行うべきだ。今回の取り組みが広がりを見せてほしい」と話した。

【用語解説】あいまいな喪失

 当たり前にあった日常が大きく変化してしまったが、何を失ったのかがはっきりしないという不確実な状況のこと。米社会心理学者のポーリン・ボス(Pauline Boss)博士は「はっきりしないまま残り、解決することも決着を見ることも不可能な喪失体験」と定義。「何がストレスの原因かを知ることが大切」としている。

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