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お寺で「おにぎりの日」 困窮者支援の食堂と協働

2023年6月11日

※文化時報2023年4月21日号の掲載記事です。

 大阪府豊中市の浄土真宗本願寺派浄久寺(森祐昭住職)が、お寺開放デー「おにぎりの日」と題するイベントを始めた。市内で生活困窮者を支援する食堂「ごはん処(どころ)おかえり」を運営する上野敏子さんと連携した初めての取り組みで、「誰もが来られる場づくりを、お寺でしたい」という上野さんの声に応えた。森住職は「お寺は社会から遊離した存在になりつつある。社会貢献を改めて意識したい」と語っており、定例化を目指している。(大橋学修)

オリジナルのおにぎりを口にする親子ら
オリジナルのおにぎりを口にする親子ら

 3月5日午前11時。地域の親子連れら15人ほどが、浄久寺の本堂に集まった。初開催の「おにぎりの日」。住職夫人お手製の白和(しらあ)えをおかずに、おにぎりを食べようというイベントだ。

 おにぎりは用意されたものではなく、参加者が自分でにぎる。炊き立てのご飯とごま塩、ふりかけが用意され、好みの具材を選ぶ。ソフトボールほどの大きさのおにぎりを作る参加者もいた。

 「何個食べる?」「目標5個」「そんなに食べるの!」と会話が弾み、全員でご本尊に向かって「いただきます」と「ごちそうさま」。食後、子どもたちは思い思いに遊び、大人は井戸端会議に花を咲かせた。

 冒頭には、森祐真副住職が法話を行った。お寺の雰囲気を味わうために必要と考えた上野さんの提案だ。祐真副住職は、かつてのお寺が学習塾や病院、薬局などの役割を果たしていたことを紹介し、お寺は頼れる場所だと伝えた。

つながった二つの思い

 浄久寺では、祐真副住職の知人の親子らが過ごす寺子屋を、5年前から毎月開いている。夏休みには境内にプールを出し、水風船を投げて、全身水浸しになって遊ぶ。

 祐真副住職と参加者らは、寺子屋を開いた当初から、活動を地域に広げたいと考えていた。昨年11月、居場所づくりに協力するお寺を探していた上野さんと、会員制交流サイト「フェイスブック」でつながった。

 上野さんは、2019年から食堂「ごはん処おかえり」を開いている。子どもは無料で食べられるほか、大人も経済的に困っている人なら無料で食事を提供してもらえる仕組みがある。

子どもの世話を焼く上野さん(中央)
子どもの世話を焼く上野さん(中央)

 来店するのは、長らくひきこもり状態になっている人や介護離職中の人などで、行政の支援が届いていないケースが大半。上野さんは「食事はつながるためのツール。話を聴いて、行政につなげている」と話す。

 だからこそ、「お寺が悩む人の話を聴く場になってほしい」と期待する。広々としたお寺の空間で交流を重ねれば、「話しても大丈夫」と、安心してもらえると考える。「なにしろお坊さんは傾聴のプロ。仏様の前で話すと落ち着くし、癒やしの効果もある」と、上野さんは笑顔を見せた。

高まるお寺への期待

 「おにぎりの日」には、自閉症の息子がいる清元由美子さん(58)も参加した。「彼が困ったときに、頼れる場が必要。事業所は閉鎖される可能性もあるが、お寺はいつまでも残っていくはず」と話す。

浄久寺本堂での食後に手を合わせる「おにぎりの日」の参加者
浄久寺本堂での食後に手を合わせる「おにぎりの日」の参加者

 不安を感じているのは、住み慣れた地域と離れたグループホームで暮らす可能性があること。「子どもの頃から、地元の人たちに認知してもらっている。グループホームに入れば、今まで築き上げてきた人間関係がなくなる」と漏らす。そこで、息子自身がお寺の活動を手伝うことで、支援する側にも回れることに期待している。「支援されながら、支援していける暮らし方ができれば」と願っている。

 見学に訪れた豊中市社会福祉協議会の勝部麗子事務局長は「お寺さんは月参りなどで、家庭の日常生活に入り込む。私たちでは届かないところに支援が届く」と強調。「お寺はコミュニティーの拠点になる。これから一緒にやっていけると期待している」と目を輝かせた。

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