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10代の居場所を寺に NPO法人やんちゃ寺

2023年8月22日

※文化時報2023年6月30日号の掲載記事です。

 劣等感や自信のなさから“やんちゃ”に走りがちな少年少女の居場所をお寺につくろうと、NPO法人やんちゃ寺(滋賀県草津市)が真言宗泉涌寺派遍照寺(同市)を借りて活動している。多い時には約20人が境内に集い、思い思いに遊ぶという。最大の特徴は、大人の立ち入りが禁止されていること。子どもたちの立場に立った運営を強く意識し、活動日は親ですら見学を断っている徹底ぶりだ。(松井里歩)

認め合える場所

 毎月第1・3・5土曜。街なかに隠れる秘密基地のような遍照寺の境内で、さまざまな遊びが繰り広げられる。ボードゲームや卓球、縄跳び、アクセサリー作り。キッチンやホットプレートを使って料理もする。

子どもたちが集まる遍照寺の境内
子どもたちが集まる遍照寺の境内

 やんちゃ寺は、さまざまな問題や悩みを抱える10代の中高生らが安心できる居場所として運営されている。学校も学年も異なる子どもたちが関わり合うことで、それぞれの個性を素直に認め合うようになるという。

 「どんな状況にある子でも受け入れてくれる雰囲気が、お寺にはある」と、代表の佐藤すみれさん。自信のない子も、お寺では卑下することなく、落ち着いて過ごす。ひきこもりがちだった子が笑顔を取り戻し、学校へ行くことを決めるなど、気力が芽生えて新しいことに挑戦する例も多いのだという。

 大人の立ち入りには気を付けている。「居場所とは、人間関係。毎回違う大人が何度も出入りすると、安心して過ごせる居場所にならない」。スタッフには看護師と保健室の教員をはじめ、かつてやんちゃ寺に通っていた青年など多様な大人がいるが、「いつもこの人がいる」という安心感を持ってもらえることを大切にしているという。

違う自分になれる

 佐藤さんは、臨床心理士として行政機関で多くの子どもと関わってきた。職場の派遣で出向いたドイツで、民間による活発な若者支援に触れたのを機に、日本にも必要なサポートだと感じて、やんちゃ寺の立ち上げを決めた。

やんちゃ寺の活動について説明する佐藤すみれさん
やんちゃ寺の活動について説明する佐藤すみれさん

 相談に来る子どもから「滝に打たれて修行したい」「生まれ変わってやり直したい」といった声を聞き、お寺なら非日常で普段と違う自分になれる場ができるのでは、と考えたという。

 コロナ前は近隣の米原市や長浜市の寺社でも活動していたが、コロナ禍では閉塞的な生活になったからこそ居場所が必要だという意見と、感染リスクを懸念する声が上がった。やんちゃ寺は安全を優先し、拠点である草津市での開催に絞った。

 遍照寺は佐藤家の檀那寺で住職とは顔なじみだったことから、場所を借りる承諾を得られた。忙しい住職の代わりに管理人が常駐し、活動を見守る。

 多くの子どもたちは学校か家庭のどちらかにしか居場所がないと感じ、そこでの失敗や苦痛から、心に大きな影響を受ける。佐藤さんは「それ以外の所に風穴が開いていれば、他の視点によって自分の良さを再確認できる。こうした居場所は誰にとっても大切だ」と話す。

 非行や不登校に限らず、居場所を求める子どもなら誰でも受け入れる。すると子どもたちが楽しそうにコミュニケーションを取るのだという。

 今後の活動について佐藤さんは、昔話の『桃太郎』に例えて、「今は流れてきた桃を拾う支援しかできていないが、桃が流れてくる根本の部分を止められるように取り組みたい」と話している。

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