2023年9月3日
※文化時報2023年8月1日号の掲載記事です。
子どもたちに夏休みの思い出をつくってもらおうと、大阪府豊中市の浄土真宗本願寺派浄久寺(森祐昭住職)は7月23日、お寺開放デー「流しそうめん」と題してイベントを行った。3月から行っている子ども食堂の拡大版で、同市内で生活困窮者を支援する食堂「ごはん処(どころ)おかえり」と、同市社会福祉協議会が協力。親子連れら80人が訪れ、盛況となった。
浄久寺は、寺子屋を開いてきた森祐真副住職(39)と、ごはん処おかえりを運営する上野敏子さん(55)がつながった縁で、子どもたちの居場所となることを目指して活動。自分たちでにぎったおにぎりを食べる子ども食堂「おにぎりの日」と、フードパントリーを毎月交互に行っている。
この日は大阪府の「子ども食堂における食の支援事業」などを活用し、そうめん200把を調達。缶詰やレトルト食品などは「お土産」にした。庭に青竹を割った長さ約7メートルの流しそうめん台を設け、室内ではウォータースライダー型の流しそうめんとおにぎりを振る舞った。
小学1年の長男を連れて初めて訪れたという吉中敦子さん(42)は「すてきな雰囲気のお寺でこのようなイベントを開いてくださり、とてもありがたい。お寺に出入りしている近所の子たちがすごくいい子で人懐っこく、人格も育つのだなと実感した」と話していた。
「きょうのテーマは『分け合えば幸せは倍に、取り合えば悲しみは倍に』。順番を抜かさず譲り合って、おなかも心もいっぱいになって帰ってほしい」
流しそうめんを始める前、森祐真副住職は子どもたちにそう語り掛けた。地獄と極楽の食事にはいずれも長い箸が使われるが、使い方は異なるという「三尺三寸箸」の説話を分かりやすくして、法話を行った。
子ども食堂の際には法話を欠かさないという森副住職。「子どものためになる話を、必ずしてほしい」との大人たちの要望に応えているという。
「昨今は一般の人よりも宗教者の方が宗教の話を控えめにしがちだが、お坊さんが胸を張ってお坊さんらしく話せばいいのだと実感している」
これからも、子どもたちに「お寺で遊んだ」「手を合わせて過ごした」という記憶を紡いでほしいと考えている。「ギスギスした社会でも、お寺がほっとできる空間になれば」。子ども食堂に四季折々の行事を重ねていく構想を描いている。
ごはん処おかえりの上野敏子さんは「お寺が居場所になるためには、子どもを介すとかなりハードルが下がる」と説く。「まず門を開き、庭を開放して、型にとらわれずにいろいろな催しをしてほしい。お寺には魅力があるし、お坊さんは傾聴のプロなのだから」と話した。