2023年11月3日
※文化時報2023年9月19日号の掲載記事です。
天理教甲京分教会(京都市上京区)の「おかえり食堂」が今年で開設5年目を迎えた。18歳で退所を余儀なくされる児童養護施設=用語解説=を出た若者の居場所づくりとして始まり、新型コロナで困窮するひとり親家庭やヤングケアラー=用語解説=の家庭向けに弁当や食品を渡す活動に発展。今も退所者らが手伝いに来たり、ふらりと訪れたりしている。教会長の辻真一さん、治美さん夫妻は「あの子たちのおせっかいなおっちゃん、おばちゃんでありたい」と話す。(大橋学修)
「おかえり食堂」は2019年2月から毎月2回ペースで開いている。無料の弁当のほか、食料や生活必需品を配布。弁当は、毎回80食程度を調理する。食材や支援物資は他の団体から寄贈されたものや、教会で買い入れたものもある。
真一さんの肌感覚では、ヤングケアラーやパートナーの暴力(DV)から逃れてきた人たちには頼る場所が少ないという。「自分たちだけだと月30日のうちの2食だけだが、活動をする人が大勢いれば、助かる家庭は増える」。ノウハウを伝えることにも注力し、〝のれん分け〟したおかえり食堂は2カ所に上る。
学校給食だけが一日の食事となっている子どもを少しでも助けようと、近くの旧西陣小学校を会場とした「もとにしツナガル食堂」も、友人の運営する子ども食堂と連携して開いている。
元々は、里子として育った同級生と仲の良かった長女から頼まれ、夫婦で里親研修を受けたのがきっかけだった。研修の一環で訪れた児童養護施設「和敬学園」(京都市上京区)で、退所した若者に帰る場所がなく相談できる人もいないこと、夜の街や犯罪グループに足を踏み入れる場合があることを聞かされ、「すぐに居場所をつくらなければならない」と感じた。
退所した若者たちは現在、スタッフとして弁当や食品の配布を手伝い、子どもたちの遊び相手にもなっている。真一さんは、「人のために役立つことが喜びになり、積極的に手伝ってくれるようになった」と話している。
【用語解説】児童養護施設
虐待などで親と共に生活できない子どもを受け入れる施設。おおむね1歳~18歳が暮らしており、高校卒業後に進学しない場合、18歳で退所を余儀なくされることから「18歳の壁」と言われることもある。こども家庭庁によると、2020年10月1日現在で全国610カ所の施設に2万3008人が入っている。
【用語解説】ヤングケアラー
障害や病気のある家族や高齢の祖父母を介護したり、家事を行ったりする18歳未満の子ども。厚生労働省と文部科学省が2021年4月に公表した全国調査では、中学2年生の5.7%(約17人に1人)、全日制高校2年生の4.1%(約24人に1人)が該当した。埼玉県は20年3月、支援が県の責務と明示した全国初の「ケアラー支援条例」を制定。全国の自治体で同様の条例制定が相次いでいる。