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「おそとのアトリエ」親も子も、ありのままに

2023年11月10日

※文化時報2023年10月6日号の掲載記事です。

 浄土真宗本願寺派西光寺(大阪府茨木市)で9月22日、子どもたちが絵の具を使って自由に表現する「おそとのアトリエ」が行われた。境内全体が子どもたちのアトリエとなったほか、本堂では「寺カフェ」が行われ、大人たちの座談の場となった。参加者は約20人。地域住民が思い思いにくつろげる空間として、お寺が活用されている。(松井里歩)

境内使い親子交流

 個性あふれる色とりどりの作品が並んだ。境内の「おそと」で1歳から4歳の子どもたちが集い、筆や刷毛(はけ)、歯ブラシなどで画用紙に絵の具を塗っていく。「公園や家だとできない遊びなのでありがたい」「自分も絵の具を触るのが久しぶりで新鮮」。保護者からはそんな声が上がった。

スタッフに見守られながら絵の具で戯れる子どもたち
スタッフに見守られながら絵の具で戯れる子どもたち

 この日は本堂で毎月恒例の寺カフェを同時開催。近所に住む常連の主婦たちのほか、「おそと」を一通り楽しんだ親子らも加わって交流した。坊守の櫻井久美さん(48)お手製のみそ汁、お菓子やコーヒーを味わいながら、少しずつ打ち解けていった。

 寺カフェは、櫻井さんが〝ママ友〟らと話す機会をつくろうと始め、口コミで広まった。時には別の学区から教頭先生も訪れ、学校や子ども、地域のことについてお互いに率直な気持ちを話し合うこともある。

 櫻井さんは「普段から触れ合っていないと知れないことは多い。井戸端会議のような場はやっぱり必要」と話す。

 寺カフェの常連という森口さゆりさん(41)は、中学1年で不登校の娘と一緒に遊びに来ることもある。「日中の過ごし方を尋ねられたとき『お寺に行っている』と言うだけで公的な信頼を得られる」と話し、お寺という居場所の必要性を感じているという。

寺カフェで談笑する櫻井さん(右端)
寺カフェで談笑する櫻井さん(右端)

「ねば」「べき」手放す

 子どもや保護者の「場」をつくる二つのイベントには、主催者に共通する「ありのまま過ごしてもらいたい」との思いがある。

 おそとのアトリエは、地域文化の活性化を進めるNPO法人recipの代表、青木敦子さん(54)が始めた取り組みで、西光寺での開催は3回目。オンラインイベントの参加者交流会でたまたま櫻井さんと同じグループで出会い、意気投合したのがきっかけで、今年4月にスタートさせた。

 青木さんは元々、公立文化施設の職員として、演劇などの公演を市民に提供する業務を行っていた。しかし、子どもたちの成長や市民へのエンパワメント=用語解説=につながることをしたいと思い、国と民間が協力して子どもの健全育成の手助けをする「子どもゆめ基金」の助成を受けて活動を始めた。

 最初は中高生向けの演劇ワークショップなどからスタートしたものの、「こうしなければ」「こうするべきだ」という思考をほぐすので精いっぱいになってしまったという。

作品を乾かす青木さん
作品を乾かす青木さん

 そこで、未就学児から自由にありのままを表現する経験を積めるようにしようと、絵画のワークショップに着目。昨年7月から大阪府高槻市の安満遺跡公園などでおそとのアトリエを開催し、土日は40人ほどが訪れるイベントになった。

 青木さんは「『ねば、べき』は大人の自分にもある凝り固まった思考。そうした意識や文化から、まず変えていきたい」と話す。

 おそとのアトリエのほか、西光寺では数カ月に1回、映画の上映会なども実施。イベントでお寺に来やすい雰囲気づくりに努めるとともに、学校へ行きづらい子どもたちに向けた居場所「寺こや」の開催も準備中だ。

 みんながありのままでいられる子ども中心の場をつくりたいと考えているという櫻井さん。「子どもたちがほっとできる憩いの場として、お寺を開放したい」と話しており、これからもさまざまなイベントを通じてお寺を子どもや親の居場所にしていく。

 次回の西光寺でのおそとのアトリエは11月24日。大人のみの参加も可能。カンパ制。

居場所づくりに努める西光寺
居場所づくりに努める西光寺

【用語解説】エンパワメント

 それぞれの人が本来備わっている能力を最大限に生かし、力をつけること。特に福祉分野では、社会的に不利な状況に置かれている人に対し、本人の強みを生かして援助することをいう。

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