2023年11月28日
※文化時報2023年11月3日号の掲載記事です。
仏教を基本に社会福祉活動を展開するNPO法人ビハーラ21(大阪市平野区)が創立20周年を迎え、10月19日に大阪市内で記念パーティーを開いた。宗教者や事業所職員ら80人超が出席。超宗派の僧侶による勉強会から始まり、高齢者デイサービスや障害者グループホームの運営へと発展を遂げた団体の次なる10年へ向け、結束を強めた。(高田京介)
真宗大谷派僧侶の三浦紀夫理事・事務局長が司会を務めて記念式典が行われ、宗派大阪教区選出の宗議会議員で理事の清史彦・瑞興寺住職の発声で三帰依文=用語解説=を唱和。西岡易子理事長ら関係者のあいさつや祝辞のほか、発足当時のメンバーだった真宗高田派宗議会副議長、松原俊幸・正覺寺住職が法話を行った。
その後、アルパ演奏者の丸田恵都子さんによる演奏があり、元理事の竹本憲司さんが乾杯の発声を行った。和やかに宴席は進み、法人の歴史を振り返るアルバム写真が大型スクリーンに映し出されると、参列者は感慨に浸っていた。
NPO法人ビハーラ21は2003(平成15)年4月、ビハーラ活動=用語解説=を学ぶ超宗派の任意団体として発足した。真宗大谷派、真宗高田派、浄土真宗本願寺派、浄土宗、融通念仏宗、曹洞宗の僧侶のほか、神道の神職や医療コンサルタントらも参加。第1回の会合を真宗大谷派真宗寺(堺市堺区)で開催した。
発起人の一人で真宗大谷派の清史彦・瑞興寺住職は、お酒を飲みながら僧侶に人生相談できる「坊主バー」を経営していたが、米ハワイへの研修旅行でチャプレン=用語解説=に出会い、終末期医療を担うホスピスに着目したという。
真宗寺の故・足利佐(たすく)住職から学習会の誘いを受け、二つ返事で引き受けた。松本曜一・円受寺副住職らと共に月に1度開くようになり、その後は「どんどん発展していった」と振り返る。
翌04年には、医療系のNPO法人と合流し、現在の団体ができた。大阪市内で高齢者デイサービスや障害者グループホーム、パン工房などを次々と展開。22年からは、聞法会を行ってきた「安住荘」(大阪市平野区)を引き継ぎ、障害者作業所を兼ねた聞法道場として再生させた。
ビハーラ21は、ビハーラを理念にした障害者・高齢者向けの住宅8棟68室を含む九つの事業所を構える。宗教者に加えて常勤・非常勤の職員約80人がおり、昨年度の売上高は3億円超に上っている。
清住職は「当初思い描いていた形とはずいぶん異なったが、三浦理事を中心に後進が引っ張り、現在の規模になった」と喜ぶ。当初を知る真宗高田派の松原俊幸・正覺寺住職は「まさかここまで大きくなるとは思ってもみなかった」と驚く。
三浦理事は「法人は大きくなったが、自由度は少しずつ失っていった。原点に立ち返ることで、あらゆることに縛られず、地域に根差したケアを行っていきたい。10年後へ向け歩みを進めていく」と力を込めた。
【用語解説】三帰依文(さんきえもん=仏教全般)
仏、法(仏の教え)、僧(教えに生きる人々)の三者を信じ、敬うという誓い。
【用語解説】ビハーラ活動(宗教全般)
医療・福祉と協働し、人々の苦悩を和らげる仏教徒の活動。生老病死の苦しみや悲しみに寄り添い、全人的なケアを目指す。ビハーラはサンスクリット語で「僧院」「身心の安らぎ」「休息の場所」などの意味。
【用語解説】チャプレン(宗教全般)
主にキリスト教で、教会以外の施設・団体で心のケアに当たる聖職者。仏教僧侶などほかの宗教者にも使われる。日本では主に病院で活動しており、海外には学校や軍隊などで働く聖職者もいる。