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仏教紙芝居を呼び水に 地域共生の拠点目指す

2023年12月19日

※文化時報2023年11月10日号の掲載記事です。

 自作の仏教紙芝居と医療・福祉関連のさまざまなイベントを掛け合わせ、地域共生の拠点づくりを進めるお寺がある。千葉県市原市の浄土真宗本願寺派西光寺(吉弘円秀住職)。毎月開く「みんなの寺カフェ」で、紙芝居公演を呼び水に、多彩な講演会やワークショップを開いている。吉弘一秀副住職(39)は「子どもから高齢者、障害者など多くの人々が気軽に来られる寺を目指したい」と話している。(山根陽一)

 10月9日の「みんなの寺カフェ」は、秋雨に見舞われるあいにくの天気だったにもかかわらず、近隣の高齢者や主婦、学生ら30人以上が本堂に集まった。

 市原地域リハビリテーション広域支援センターの作業療法士、袴田龍一さんによる「タオル体操」のワークショップからスタート。加齢とともに衰える筋肉を、効率良く気軽に鍛える体操だ。椅子に座ってタオルを使いながら、さまざまな部位を動かしていく。日々の暮らしをスムーズに行うための体づくりだという。

作業療法士の指導で行われたタオル体操のワークショップ
作業療法士の指導で行われたタオル体操のワークショップ

 9月は地域包括支援センターの担当者を講師に「認知症サポーター養成講座」を開催し、正しい認知症の知識や介護の現状について学んだ。

 「健康や食生活、遊び、おしゃれなど生活に関わるテーマを選んで専門家に来てもらう。その話題で住民の関係性が深まればいい」と吉弘副住職は語る。11月18日は薬剤師を招き「ハンドクリーム作り教室」を予定。好みのアロマオイルを練りこんだ自作のハンドクリームができるという。参加費は毎回同じで大人500円、子ども無料。収支は赤字が出ないギリギリの線だが「地域共生の要になれれば」との思いで取り組む。

法話の紙芝居を20点

 吉弘副住職が地域活動を始めたのは約10年前。当初は春と夏の子ども会が中心だった。その中で仏教を教えたいと思ったが、法話の意味が難しいのか、子どもはおとなしく聞いてくれない。

 そこで「分かりやすく伝えられる紙芝居を見せよう」と思いつき、著作権をクリアするため、紙芝居の自主制作に取り組んだ。

 「パソコンを使えば、絵の具や筆を用いなくても思い通りの紙芝居ができる。最近は大人の方にも見てもらえるので幅広く活用している」

 これまでに「象と蛇との間には」「龍王と盗賊」「仏さまのマラソン大会」「カンガルーと戦った男」など20点以上を制作。コロナ禍で始めた動画投稿サイト「ユーチューブ」の西光寺チャンネルでその多くを公開し、英語の字幕も付けている。

仏法を伝える自作の紙芝居は20点以上制作した
仏法を伝える自作の紙芝居は20点以上制作した

 10月9日は復讐(ふくしゅう)の連鎖のむなしさを伝える作品「シン・ゲタ」を披露し、老若男女が聞き入った。

障害と心の病超えて

 今後、吉弘副住職が本格的に取り組みたいと考えているのが、ひきこもりなどで仕事や社会参加をためらう人たちへの支援だ。

 生活困窮者の自立支援などを行う社会福祉法人「ききょう会」(市原市)や、同法人が運営し知的障害者に働く環境を提供する「ジョブハウス・もみの木」(同市)などと連携する機会が増えたことで、今後の地域共生の課題として重要視するようになったという。

 10月9日には「ジョブハウス・もみの木」の障害者が作ったパンを昼食として参加者に提供。こうした問題を多くの人に考えてもらう機会とした。

 全ての人が気軽に集い、世代や性別の違い、障害や心の病の有無を超えて話ができる場ができれば、豊かな地域共生が育まれるのではないか。そう考える吉弘副住職は、西光寺の将来展望をこう見据えている。

 「どこかに生きる場があると気付けば、人は必ず一歩前へと踏み出せる。社会に踏み出せずにいる人々の背中を押すような役割を担いたい」

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