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知的障害のある人は、どこで暮らしたいか

2024年1月31日

※文化時報2024年1月1日号の掲載記事です。

 佛教大学の田中智子教授らでつくるグループは昨年12月3日、同大学二条キャンパス(京都市中京区)で「京都市に暮らす知的障害のある人の暮らしの場の待機者・希望者調査」に関する報告会を行った。社会福祉学部の学生が医療的ケア児=用語解説=の親など43人に行ったインタビュー調査について発表し、調査に応じた5人の保護者が思いを語った。

(写真アイキャッチ兼用
 キャプ:知的障害のある子の親への調査を踏まえて提言を行う学生ら)
知的障害のある子の親への調査を踏まえて提言を行う学生ら

 「子どもと親のSOSをキャッチする仕組みを考えるシンポジウム実行委員会」の主催。実行委は知的障害のある17歳の長男を母親が殺害した2020年7月の事件を契機に、田中教授や知的障害のある子どもの保護者、支援団体などが発足させた。

 22年には「京都市に暮らす障害のある人・家族の生活実態調査」を実施し、入所施設の増設や支援の拡充を求める声が多いことを明らかにした。今回は、生活実態や家族の思いなど10項目を聞き取った。

 医療的ケア児の親への調査では、「日中過ごす場所に医療的ケアの体制がない」「休息や急な用事、入院のためのショートステイがない」などの声があった。学生らは「介護ができなくなったときは、施設への入所を考えているが、自宅での暮らしに近い支援が求められている。医療的ケアができる施設を開設しやすいよう要件を整え、財政支援を行うことが必要」と提案した。

 障害のある子の面倒を見られなくなる「親なきあと」の暮らしの場に関する調査では、地域との関わり合いを持ちながら暮らすことを求める声があった。学生らは「住民の理解や障害のある人にも適応した環境整備が必要」とした上で、「根底にある課題として、受け入れ施設の少なさが挙げられる」と訴えた。このほか「本人や家族の不安に寄り添う専門職のいる施設が求められる」とも指摘した。

 医療的ケア児を育てる宮下暁子さんは「場よりも人の存在が大切。技術だけでなく、状態が分かる人がいてほしい。そのためには長期的な交流が必要」と話し、自閉症の子がいる小寺一男さんは「将来、老いた娘が、障害や介護の垣根を越えて、幸せに暮らしていられることを願っている」と語った。

 【用語解説】医療的ケア児
 人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、 痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童。厚生労働省科学研究班の報告では、2017(平成29)年時点で全国に約1万8千人いると推計されている。社会全体で生活を支えることを目的に、国や自治体に支援の責務があると明記した医療的ケア児支援法が21年6月に成立、9月に施行された。

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