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母子家庭向けシェアハウス ホテル併設、牧師開業

2024年5月9日

※文化時報2024年3月29日号の掲載記事です。

 母子家庭向けのシェアハウスを併設した新たなタイプのホテルが京都市内にお目見えした。宿泊費の10%を、ハウスの運営資金に充てる「社会貢献型ホテル」。開業したキリスト教の牧師は「何げない宿泊が温かい支援の輪として広がれば」と期待する。シェアハウスは4月にオープン予定だ。(奥山正弘)

教会超え社会貢献を

 「HOTEL ECCLESIA」(ホテル エクレシア、京都市中京区)は昨年11月、JR二条駅から徒歩4分の好立地にオープンした。建物は新型コロナウイルス禍で撤退したホテルを利用。ギリシャ語の「教会」にちなんで命名した。

 日本最大のプロテスタント教団・日本基督教団世光教会(京都市伏見区)伝道師の後宮嗣(うしろく・つぐ)さん(35)が立ち上げ、社長を務める「グレープヴァイン」(同区)が運営。知人で同教団高槻日吉台教会牧師の吉岡恵生(やすたか)さん(38)が専務を引き受けた。牧師らのホテル経営は異例という。

 後宮さんは約10年間、商社のビジネスマンだったという異色の経歴を持つ。牧師を志して退職し、2020年に同志社大学大学院神学研究科に進学。「教会という宗教的枠組みを超えて、牧師として持続可能な社会に貢献したい」と、大学院在籍中に同志社の先輩牧師である吉岡さんと起業した。

(画像アイキャッチ兼用:母子家庭向けシェアハウス併設ホテルを開業した後宮さん(右)と吉岡さん=京都市中京区)
母子家庭向けシェアハウス併設ホテルを開業した後宮さん(右)と吉岡さん=京都市中京区

子の学習支援にも力

 公的機関の支援を受けにくく、社会的孤立や経済的困窮に陥りがちなシングルマザーと子どもたち。2人はこれらの課題を解決する一助になればと、母子家庭の共同生活を支えるシェアハウス併設の「社会貢献型ホテル」設立に乗り出した。

 ホテル宿泊費の10%がシェアハウスを運営する一般社団法人「みをつくし」(京都市中京区)に寄付され、ハウスに還元される仕組み。客室を住居へ改装する工事費のほか、入居家庭の生活、母親の就労などの支援に活用される。

 子どもたちの学習支援にも力を入れることにしており、学校や病院などで活動するチャプレン=用語解説=や学生ボランティアが勉強を教えたり、キャンプなどの野外活動に使ったりする原資となる。

ひとり親家庭を応援

 シェアハウスはホテル1階の客室4部屋を改装。風呂やトイレを備えた居室(約34平方メートル)3部屋と、台所や冷蔵庫、洗濯機などを配置した共同スペース(約28平方メートル)を設ける。家賃は月5万8千円(水道光熱費、インターネット代など共益費込み)。初期費用や連帯保証人は不要とする。

(画像:シェアハウスの居室と同じ間取りの部)
シェアハウスの居室と同じ間取りの部屋

 2月からホテル客室の改装工事に着手。入居希望者の面談や施設見学などを経て、3月末までに入居し、4月にオープンする予定だ。

 「隣人を愛せよ」―。聖書に記された教えを体現するため、社会との新たなつながりを求めて教会を飛び出した2人の宗教者。「シェアハウスの運営を通じて、ひとり親家庭の生活を応援し、安心して子育てできる共生社会を目指す」と意気込んでいる。

 シェアハウスの問い合わせは「ホテル エクレシア」(075―406―5600)。

【用語解説】チャプレン(宗教全般)

主にキリスト教で、教会以外の施設・団体で心のケアに当たる聖職者。仏教僧侶などほかの宗教者にも使われる。日本では主に病院で活動しており、海外には学校や軍隊などで働く聖職者もいる。

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