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防災「ゆるスポ」から 住職が大会企画 願生寺

2024年5月27日

※文化時報2024年4月9日号の掲載記事です。

 障害の有無にかかわらず誰もが楽しめる「ゆるスポーツ」の大会「第1回長居公園通りごちゃまぜゆるスポーツ大会」が3月31日、大阪市東住吉区の長居障がい者スポーツセンター体育室で開かれた。浄土宗願生寺(大阪市住吉区)の大河内大博住職らが企画したイベントで、地域住民ら198人が「棒サッカー」などユニークな競技に親しんだ。(大橋学修)

 イベントを通じて地域住民が交流し、災害時に相互支援が可能なネットワークをつくるのが目的。願生寺は2021年9月に始めた「防災プロジェクト」で、障害のある人や医療的ケア児=用語解説=など配慮が必要な人たちのことを地域に知ってもらい、お互い安心して助けたり、頼ったりできる機運の醸成を目指している。

 大会には、障害の有無を問わず10~70代の住民らが参加。ゴールを目指してボールを棒で打ち合う「棒サッカー」や、帽子にボールを載せてゴールまで運ぶ「ハットラグビー」など、8競技の「ゆるスポーツ」を楽しんだ。

(画像アイキャッチ兼用:「ゆるスポーツ」の「棒サッカー」を楽しむ参加者たち=3月31日、大阪市長居障がい者スポーツセンター)
「ゆるスポーツ」の「棒サッカー」を楽しむ参加者たち=3月31日、大阪市長居障がい者スポーツセンター

 会場には、災害時に参加者が「助けてほしいこと」「助けられること」を書き込んだカードを貼り付けるメッセージボードも設置。「マンションに知人がおらず、災害時に助けてもらうのを諦めている」という障害のある子の親の声などが紹介された。

 災害アドバイザーで「オフィス園崎」代表の園崎秀治さんは「災害時に近所の人が手を差し伸べ合うには、知り合うことが必要。それを実現する場になった」と話し、大阪市住吉区社会福祉協議会の松尾浩樹事務局長は「楽しい企画。幅広い層が参加する仕組みになっていた」と評価した。

多様性がバリア消す

 「長居公園通りごちゃまぜゆるスポーツ大会」は「ごちゃまぜ」と銘打った通り、どの参加者に障害があるのか判然としない状態だった。多様な人々が交じり合うイベントにしたことが、社会的なバリア(障壁)を取り払った形だ。

 車いすを使う人と「ハットラグビー」を楽しんでいた人が、一緒に移動して別の競技を体験したり、チームワークを発揮したりしていた。普段は子どものケアに忙しい保護者が、ゆったり休憩している光景も見られた。

(画像:車いすで生活する参加者にインタビューする大河内住職)
車いすで生活する参加者にインタビューする大河内住職

 願生寺の防災プロジェクトに参加している小西かおる大阪大学大学院教授(保健学)は「バリアがなくなり、困り事に気付いた人が手を貸していた。互いを知ろうと自然に行動していた」。大阪医療的ケア児・者支援ネットワーク共同代表で、障害のある子どもを持つ田中美紀さんは「本人たちがこんなふうに楽しんで笑うのだと気付いてもらえたと思う」と振り返った。

 大河内住職は「春休みのコンテンツとして毎年開催し、地域独自の『ゆるスポーツ』も考案したい。障害に配慮しながら取り組むことが、災害時の支援につながるはずだ」と展望を語った。

【用語解説】医療的ケア児

人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童。厚生労働省によると、2021年度時点で全国に約2万180人いると推計されている。社会全体で生活を支えることを目的に、国や自治体に支援の責務があると明記した医療的ケア児支援法が21年6月に成立、9月に施行された。

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